手洗いでウイルスはどこまで落ちる?正しい手洗い【小児科医が解説】

外食の時、手洗い場が遠いとついついアルコール消毒だけしてご飯を食べようってなりますよね。でもこれ、実は危険です!

夏に流行するアデノウイルス・手足口病・ヘルパンギーナや、冬に流行するノロウイルス・ロタウイルスは、アルコール消毒が効きにくいタイプのウイルスです。だから頼りになるのは、「石けんでの手洗い」なんです。

この記事では、小児科専門医が「なぜこれらのウイルスにはアルコールより手洗いなのか」「手洗いでウイルスがどれくらい落ちるのか(実験データ)」「家庭でできる正しい洗い方」の3つを、わかりやすく解説していきます。

アルコールが効きにくいウイルス

夏風邪の代表であるこの3つです。

  • アデノウイルス(プール熱・のどの風邪・結膜炎・胃腸炎)
  • 手足口病(コクサッキーウイルス・エンテロウイルス)
  • ヘルパンギーナ(コクサッキーウイルス)

また、冬の胃腸の代表のこの2つもアルコールが効きにくいです。

  • ノロウイルス
  • ロタウイルス

どれも保育園や幼稚園でよく流行し、家族内にも広がりやすい感染症です。そして共通しているのが、これらのウイルスはアルコール消毒が十分に効かないという点です。

なぜアルコールが効きにくいの?

アルコール消毒は、ウイルスの表面をおおう「エンベロープ」という脂(あぶら)の膜を壊すことで効果を発揮します。新型コロナウイルスやインフルエンザウイルスはこの膜を持っているので、アルコールがよく効きます。

ところが、ここまで挙げてきたウイルスたちは、この膜を持ちません。これを「ノンエンベロープウイルス」と呼びます。外側が硬いタンパク質の殻でできているため、アルコールでは壊れにくいのです。

つまり「アルコール消毒をしたから大丈夫」と思っていても、これらのウイルスには届いていない可能性があります。

アルコールが効きにくいウイルスについては、こちらの記事でも詳しく解説しています。(👉アルコール消毒が効きにくいウイルスとは?)

頼りになるのは「石けんでの手洗い」

そこで大事になるのが手洗いです。

ポイントは、手洗いはウイルスを「殺す」のではなく、石けんの力で物理的に「洗い流す」という点。だから、エンベロープがあってもなくても関係なく効果があります。これらのウイルスに対して、いちばん確実な方法なのです。

では、実際にどれくらい落ちるのでしょうか。

手洗いでウイルスはどれくらい落ちる?【実験データ】

手についたウイルスを約100万個としたとき、洗い方によって残る数がどう変わるかを調べた実験データがあります。

洗い方残ったウイルス(目安)減った割合
手洗いなし約1,000,000個—
流水だけで15秒約10,000個約99%
石けん10秒+流水15秒数百個約99.99%
「石けん10秒+流水15秒」を2回数個約99.9999%

① 流水だけで15秒 → 約1万個

水で15秒流すだけでも、約1万個まで減ります。「99%落ちるならいいのでは?」と思うかもしれませんが、それでもまだ1万個が手に残っている計算です。

感染するのに必要なウイルスの数は種類によって異なりますが、決して少ない量とはいえません。水洗いだけでは物足りない、というのが正直なところです。

② 石けん10秒+流水15秒 → 数百個

石けんで10秒もみ洗いをして、15秒しっかり流す。たったこれだけで、残るウイルスは数百個まで激減します。流水だけの場合と比べて、桁が2つも違います。

「石けんを使うかどうか」で、これほど差が出るということです。まずはここを目標にしましょう。

③ 「石けん10秒+流水15秒」を2回 → 数個

さらにもう1回くり返すと、残るのは数個レベルまで。ほぼ落としきったといえる状態です。

毎回2回洗う必要はありませんが、次のような場面では「2回洗い」がおすすめです。

  • 家族に手足口病・ヘルパンギーナ・胃腸炎の人がいるとき
  • おむつ替えや、嘔吐・下痢の処理をしたあと
  • 外から帰ってきて、これから食事の準備をするとき

数字を見るときの注意

このデータは、ノロウイルスの代わりとなる実験用ウイルス(ネコカリシウイルス)を使って行われたものです。今回取り上げたウイルスそのものを測ったわけではないので、あくまで「手洗いの効果の目安」として見てください。

それでも、「石けんを使う」「しっかり流す」「回数を重ねる」ほど効果が上がる、という傾向はどのウイルスにも共通します。

正しい手洗いのやり方

難しく考える必要はありません。次の流れを意識してみてください。

① 流水で手をぬらす
② 石けんを泡立て、10秒以上しっかりもみ洗いする
③ 流水で15秒すすぐ
④ 清潔なタオルやペーパータオルで水気をしっかり拭く

しっかりと時間をかけて洗うことが大事です。

洗い残しやすい場所

もみ洗いのときは、次の場所を意識すると洗い残しが減ります。

  • 指と指の間
  • 親指のまわり(にぎるように洗う)
  • 指先・爪の間
  • 手首

洗ったあとの拭き方も大切

ぬれたままの手は、乾いた手よりも菌やウイルスが移動しやすい状態です。せっかく洗っても、家族と共用の湿ったタオルで拭いてしまうと台無しになることも。

清潔なタオル、できればペーパータオルでしっかり水気を拭き取りましょう。家庭のタオルはこまめに交換するのがおすすめです。

子どもと続けるためのコツ

子どもにとって「10秒もみ洗い+15秒すすぎ」は意外と長い時間です。時間を数えるより、歌やタイマーを使うほうが続きます。

  • 「ハッピーバースデー」を2回歌う(約20〜25秒)
  • 好きな歌のワンフレーズを決めておく
  • 泡が出るポンプ式ハンドソープにして、洗うこと自体を楽しくする
  • 踏み台を置いて、蛇口と洗面台に手が届くようにする
  • 親がとなりで一緒に洗う(見て覚えるのがいちばん早い)

最初から完璧を目指さなくて大丈夫です。「石けんを使う」習慣がつくだけでも、効果は大きく変わります。

外出先で手洗い場がないときは?

フードコートや公園など、水道はあるけど石鹸がないことって結構ありますよね。

流水で流すだけでも効果はありますが、上で説明した通り石鹸を使用するに越したことはありません。
持ち運びできるハンドソープを一つかばんに入れておくだけで、ノロやアデノ、手足口病からもを守ることができます。

下記はかばんに入れておく泡ソープの一例です。


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よくある質問(FAQ)

Q. 15秒より長く洗ったほうがいいですか?

A. 長く洗うほど効果は上がりますが、まずは「石けんで10秒もみ洗い+流水15秒」を確実にできることが大切です。時間を延ばすより、洗い残しやすい場所を意識するほうが効果的です。

Q. 泡ハンドソープと固形石けん、どちらがいいですか?

A. どちらでも構いません。大切なのは石けんを使ってもみ洗いすることです。子どもが使いやすいものを選んであげてください。

Q. 薬用(殺菌成分入り)のほうが効果は高いですか?

A. ウイルスに対しては、薬用かどうかよりも「石けんで洗い流す」ことのほうが重要です。普通のハンドソープで十分です。

Q. アルコール消毒は意味がないのですか?

A. いいえ。新型コロナやインフルエンザなど、エンベロープを持つウイルスにはよく効きます。この記事で挙げたウイルスには効きにくい、というだけです。手洗いを優先しつつ、状況に応じて使い分けましょう。

Q. 手が荒れてしまいます。

A. 洗ったあとに保湿クリームを塗りましょう。手が荒れているとかえって菌やウイルスが残りやすくなります。手洗いと保湿はセットで考えてください。

まとめ

  • 夏風邪(アデノ・手足口病・ヘルパンギーナ)と、冬の胃腸炎(ノロ・ロタ)のウイルスには、アルコールが効きにくい
  • 頼りになるのは、石けんで物理的に洗い流す手洗い
  • 流水だけ15秒では約1万個が残る。石けん10秒+流水15秒で数百個まで激減
  • 気になるときは「2回洗い」でほぼ落としきれる
  • 洗ったあとは、清潔なタオルでしっかり水気を拭き取る

毎日のことだからこそ、「石けんを使って、しっかり流す」。これが感染予防のいちばんの近道です。

「うちの子、しょっちゅう感染症をもらってくる」と感じたら

ここまで、アルコールが効きにくいウイルスと、石けんでの手洗いの効果について解説してきました。手洗いは、ご家庭でできるいちばん確実な予防法です。

ただ、どれだけ気をつけていても、保育園や幼稚園に通っていると感染症をもらってくる時期はあります。「うちの子だけ休みが多い気がする」「これは普通の範囲なのだろうか」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。

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参考文献・出典

・森功次ほか. Norovirusの代替指標としてFeline Calicivirusを用いた手洗いによるウイルス除去効果の検討. 感染症学雑誌. 2006;80(5):496-500.

・厚生労働省「ノロウイルスに関するQ&A」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/kanren/yobou/040204-1.html

・CDC「Handwashing: Clean Hands Save Lives」 https://www.cdc.gov/clean-hands/

・Kampf G. Efficacy of ethanol against viruses in hand disinfection. J Hosp Infect. 2018;98(4):331-338.

・国立感染症研究所「手足口病とは」「ヘルパンギーナとは」 https://www.niid.go.jp/

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。お子さんの体調やご心配なことは、かかりつけの医療機関にご相談ください。