「卵って、いつから食べさせていいんだろう」
「アレルギーが怖いから、もう少し先でいいかな」
離乳食を進めていると、卵や小麦の前で手が止まってしまうこと、ありませんか。その気持ちは、とてもよく分かります。
でも実は、心配だからと後回しにすることのほうが、アレルギーになりやすくしてしまうかもしれないのです。
この記事では、なぜ早く始めたほうがいいのか、そして実際にどのくらいの量から、どう進めればいいのかを、小児科専門医がやさしく解説します。
「心配だから、あとで」は、もったいない
ひと昔前は、「アレルギーが心配な食べ物は、遅らせたほうがいい」と言われていた時代がありました。実際に、そう指導されたことがある方もいらっしゃるかもしれません。
ところが、その後の研究で、遅らせても予防にはならないことが分かってきました。厚生労働省の「授乳・離乳の支援ガイド」にも、アレルギーが心配だからといって離乳食の開始や特定の食べ物を遅らせても、アレルギーを予防できるという科学的な根拠はない、とはっきり書かれています。
つまり、遅らせることに「得」はありません。それどころか今は、早めに食べ始めたほうがアレルギーになりにくい、ということが分かってきています。
早く始めた子ほど、卵アレルギーになりにくい
2023年に、とても信頼度の高い研究が発表されました。世界中で行われた質の高い研究を、すべて集めてまとめて分析したものです。
卵については、9つの研究・のべ4,811人の赤ちゃんのデータが集まりました。その結果は次のとおりです。
生後6か月までに卵を食べ始めた赤ちゃんは、それより遅く始めた赤ちゃんにくらべて、卵アレルギーになるリスクが約40%低い。

じつは、早く食べ始めた方がアレルギーになりにくいんです
なぜ、早く食べると予防になるの?
ここには、体のおもしろい仕組みが関係しています。
わたしたちの体には、口から入ってきた食べ物に対して「これは敵じゃない、安全な食べ物だ」と覚える仕組みがあります。むずかしい言葉では「経口免疫寛容」といいますが、要するに、食べることで体が慣れていくということです。この仕組みは、実際に食べることでしか育ちません。
一方で、食べ物の成分は、口以外からも体に入ります。それが皮膚です。湿疹などで荒れた皮膚から食べ物の成分が入り込むと、体は逆に「これは敵だ」と覚えてしまい、アレルギーになりやすくなります。
つまり、口から先に「安全だよ」と覚えさせるか、皮膚から先に「敵だ」と覚えさせてしまうかの、いわば競争なのです。だからこそ、皮膚をきれいに保ちながら、口からは早めに食べ始める。この両方が大切になります。
皮膚から入ってアレルギーになる話はこちらでくわしく解説しています。(👉食物アレルギーの原因は皮膚の湿疹?)
食べることで体が慣れていく仕組みについては、こちらの記事もどうぞ。(👉食物アレルギーは「食べた方が治る」?経口免疫寛容と“食べられる量”を小児科医が解説)
離乳食はいつから始める?
離乳食のスタートは、生後5〜6か月ごろが適当とされています。首がすわって、支えてあげるとおすわりができ、食べ物に興味を示すようになったころが目安です。
始め方は、なめらかにすりつぶした10倍がゆを、1日1回、1さじずつ。慣れてきたら、すりつぶした野菜を足していきます。さらに慣れてきたら、豆腐・白身魚・卵黄などのたんぱく質の食材に進みます。
ポイントは、卵もこの「離乳初期」の中で始めてよい、ということです。おかゆや野菜に慣れてきたら、卵も特別あつかいせず、同じ時期から始めていきましょう。
卵はどのくらいの量から?進め方の目安
いちばん知りたいところだと思います。順番に見ていきましょう。
ステップ1:しっかり固ゆでにした卵の「卵黄」を、耳かき1杯程度から
卵は、沸騰したお湯で20分しっかりゆでた固ゆで卵を使います。その卵黄だけを取り出して、耳かき1杯くらいのごく少量から始めます。半熟はいけません。加熱が足りないとアレルギー反応が起こりやすく、食中毒の心配もあります。
ステップ2:少しずつ卵黄1/2~1個分まで少しずつ増やす
問題がなければ、数日ごとに少しずつ量を増やしていきます。焦らなくて大丈夫です。1日で一気に増やさず、同じ量を何回か続けてから増やす、というリズムで進めます。
ステップ3:卵黄1/2個が食べられたら、次は「卵白」を耳かき1杯から
アレルギーの原因になる成分は、卵黄より卵白に多く含まれています。だからこそ卵白は慎重に、けれど先延ばしにしすぎないように進めます。同じく固ゆでにした卵白を、耳かき1杯くらいから始めましょう。
ステップ4:全卵で量を増やしていく
その後の目安は次のとおりです。
- 離乳中期(生後7〜8か月ごろ):卵黄1/2個〜全卵1/3個
- 離乳後期(生後9〜11か月ごろ):全卵1/2個
- 離乳完了期(生後12〜18か月ごろ):全卵1/2~2/3個
麦・牛乳はどうする?
小麦も牛乳も、卵と同じで「特別に遅らせる必要はない」食材です。
小麦は、10倍がゆに慣れてきたころから始められます。やわらかく煮たうどんを1〜2センチ分ほど、細かく刻んですりつぶすところからスタートしましょう。パンがゆでも構いません。
牛乳は少し注意が必要です。離乳食の材料として、加熱して料理に使う分には、小さじ1程度から始められます。ただし、牛乳をコップで「飲みもの」として与えるのは、1歳を過ぎてからにしてください。これは鉄不足を防ぐためで、アレルギーとは別の理由です。ヨーグルトやチーズなどの乳製品は、離乳中期ごろから少量ずつ試せます。
*商品にもよりますが多くの場合、ヨーグルト1gと牛乳1mlが同じくらいの乳タンパク含有量です。一方、チーズは牛乳をかなり濃くしたものなので、少量でもアレルギー症状が出やすいです。
安全に進める4つのコツ
せっかく早く始めるなら、安全に進めたいですよね。押さえておきたいのは次の4つです。
① 平日の日中に試す
食物アレルギーの症状の多くは、食べてから1時間以内(遅くても2時間以内)に出ます。かかりつけの小児科が開いている平日の日中、できれば午前中から昼にかけて試しておくと、もし何かあってもすぐに受診できます。夜や休日に試すのは避けましょう。
② しっかりと加熱する
食品にもよりますが、多くの場合は加熱するとアレルゲン性が低くなります(アレルギーの原因になるタンパク質の形がくずれて、体が反応しにくくなります)。同じ卵でも、固ゆでなら食べられるのに半熟だと症状が出る、ということが実際にあります。
③ 少量から始める
食物アレルギーは摂取した量が多ければ多いほどアレルギー症状が出やすくなりますし、出る症状が重症化します。ごく少量から始めて少しずつ量を増やしていくことで、万が一途中でアレルギー症状が出た場合でも、軽症で済むことがほとんどです。
④1回に1種類だけ
はじめての食材は1回に1種類だけにしておくと、もし症状が出たときに「何が原因だったか」がはっきりします。体調のよい日を選ぶことも大切です。
食物アレルギーってどんな症状が出るのかな?と不安な方はぜひこちらもご覧ください。👉子どもの食物アレルギー|食べた後に出る症状と受診目安を小児科医が解説
湿疹があるときは、先に皮膚を治しましょう
これは、ぜひ知っておいていただきたいことです。
さきほどお話ししたとおり、荒れた皮膚から食べ物の成分が入り込むと、アレルギーになりやすくなります。ですから、湿疹がある赤ちゃんは、食べ始める前に皮膚をきれいに治しておくことがとても大切です。
日本小児アレルギー学会も、卵を食べ始める前に、湿疹(アトピー性皮膚炎)をきれいにしておくことが望ましいとしています。ステロイドの塗り薬を怖がって中途半端に治療していると、かえってアレルギーのリスクを上げてしまいます。しっかり治して、つるつるの肌にしてから食べ始める。これが結果的にいちばん安全な進め方です。
ピーナッツやナッツはどうする?
さきほどの2023年の研究では、ピーナッツについても分析されています。生後3〜10か月ごろから食べ始めた赤ちゃんは、遅く始めた赤ちゃんにくらべて、ピーナッツアレルギーになるリスクが約70%低いという結果でした。卵よりもさらに大きな差です。
ただ、日本の離乳食でピーナッツを積極的に使うことは、あまり一般的ではありませんので、積極的に離乳食で開始しなくてもいいのではないかと思います。
そして何より、大事な注意があります。
粒のままのピーナッツやナッツは、5歳ごろまでは絶対に与えないでください。
これはアレルギーではなく、窒息の危険があるためです。かたくて丸い豆やナッツは、気管に入ると命に関わります。食べさせる場合は、必ずペースト状にして、少量から試してください。
こんなときは、自己判断で進めないでください
次にあてはまる場合は、始める前に必ずかかりつけ医に相談してください。
- 湿疹がなかなか治らない、または広い範囲に出ている
- 血液検査で「アレルギーの数値が高い」と言われたことがある
- 以前その食べ物を口にしたとき、口の周りが赤くなった、じんましんが出た、嘔吐したことがある
- きょうだいや親に、重度の食物アレルギーがある
これらにあてはまる子は、家庭で自己判断で進めるとリスクがあります。医師が皮膚の状態や検査結果を見たうえで、安全な始め方を一緒に決めていきます。
すでに食物アレルギーと診断されているお子さんは、この記事の内容ではなく、必ず主治医の指示に従ってください。
よくある質問
Q. もう10か月ですが、まだ卵をあげていません。手遅れですか?
A. 大丈夫です。研究で分かっているのは「遅いより早いほうがいい」ということであって、「この日を過ぎたらもうダメ」という締め切りがあるわけではありません。今日から始めれば大丈夫です。焦らず、少量から始めていきましょう。
Q. 念のため血液検査をしてから始めたほうが安心では?
A. 症状が出たことがないのに、念のための血液検査をすることは、一般的にはすすめられていません。検査で数値が高くても、実際には問題なく食べられる子がたくさんいるからです。検査結果だけを理由に食べさせないでいると、かえって必要のない除去につながってしまいます。詳しくはこちらの記事をご覧ください(👉血液検査で陽性=食物アレルギーではありません!)
Q. 生卵や半熟卵ではだめですか?
A. しっかり加熱してください。加熱するとアレルギーの原因になる成分の形がくずれて、反応が起こりにくくなります。それに生卵は、食中毒の心配もあります。乳幼児には必ず、中までしっかり火の通ったものを与えてください。
Q. 食べたあと、口の周りが少し赤くなりました。やめたほうがいいですか?
A. 口の周りだけの赤みは、食べ物が皮膚について刺激になっただけ、ということもよくあります。ただ、アレルギー症状の始まりの可能性もあるので、自己判断で続けたりやめたりせず、一度受診して相談してください。食べる前に口の周りにワセリンを塗っておくと、刺激による赤みは防げることがあります。
まとめ
・アレルギーが心配だからと離乳食や卵を遅らせても、予防にはならない
・むしろ、生後6か月までに卵を始めた赤ちゃんは、遅く始めた子より卵アレルギーになるリスクが約40%低い
・離乳食のスタートは生後5〜6か月ごろ。卵も同じ時期から始めてよい
・進めるコツは「平日の日中に」「しっかり加熱して」「少量から」「1回1種類」
・湿疹があるときは、先に皮膚をきれいに治してから始める
卵の前で手が止まってしまう気持ち、私もふたりの子どもを育てているのでよく分かります。でも、こわがって先延ばしにすることが、お子さんのためになるとは限りません。皮膚をきれいに保ちながら、ひとさじずつ、安全に進めていきましょう。
「うちの子の場合はどうなの?」と思ったら
ここまで、離乳食を早めに始めることの大切さと、具体的な進め方を解説してきました。ただ、実際の進め方は、お子さんの湿疹の状態やこれまでの経過、きょうだいのアレルギーの有無によって一人ひとり違います。「記事の内容は分かったけれど、うちの子の場合はどうなんだろう」と感じた方も多いのではないでしょうか。
そんなときは、たっち先生のオンライン健康相談をご利用ください。小児科専門医が、ビデオ通話で時間をとってお話をうかがいます。
- 湿疹がある子の離乳食を、いつ・どう始めればいいか迷っている
- 卵や小麦の進め方が合っているか、一度確認しておきたい
- 病院では聞ききれなかったことを、じっくり相談したい
- SNSやネットで見た情報が、自分の子に当てはまるのか確認したい
しっかり時間をとって相談の乗らせて頂きますので、病院の短い診察時間では整理しきれなかった不安も、一緒に言葉にしていけます。ご予約はカレンダーから希望の日時を選ぶだけです。
※本サービスは医療機関における「診療」ではなく、健康に関する情報提供・相談です。診断・薬の処方・治療方針の決定は行いません。症状が強いときや緊急性が疑われるときは、速やかに医療機関を受診してください。
📱 Instagramでも発信しています(フォローはこちら)
「知って役立つ子育て・子どもの病気の情報」を、小児科専門医・2児のパパであるたっち先生がInstagramでわかりやすく発信しています。
・インスタグラムでは簡単に分かりやすく
・本サイトではより詳しく徹底解説
を目指しています!
・この記事の内容も、1分くらいの動画で分かりやすく見られます👉(アレルギーが心配で離乳食が進まないはNG!)
・フォロー&保存しておくと、いざというときに見返せます
👉 Instagramをフォローして、一緒に学びましょう!(たっち先生のインスタグラム)
参考文献
・Scarpone R, Kimkool P, Ierodiakonou D, et al. Timing of Allergenic Food Introduction and Risk of Immunoglobulin E-Mediated Food Allergy: A Systematic Review and Meta-analysis. JAMA Pediatr. 2023;177(5):489-497. https://jamanetwork.com/journals/jamapediatrics/fullarticle/2802512
・厚生労働省「授乳・離乳の支援ガイド(2019年改定版)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_04250.html
・日本小児アレルギー学会「鶏卵アレルギー発症予防に関する提言」(2017年6月16日) https://www.jspaci.jp/uploads/2017/06/teigen20170616.pdf
・食物アレルギー研究会「発症予防」 https://www.foodallergy.jp/care-guide/prevention-onset/
・国立成育医療研究センター「離乳食における鶏卵摂取の考え方 〜鶏卵アレルギー予防のために〜」 https://www.ncchd.go.jp/hospital/about/section/allergy/keiran_sessyu.html
・日本小児アレルギー学会「食物アレルギー診療ガイドライン2021」/「食物アレルギー診療の手引き2023」
※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。お子さんの症状や体質、湿疹の状態によって適切な進め方は異なります。すでに食物アレルギーと診断されている場合や、湿疹がなかなか治らない場合は、この記事の内容で自己判断せず、必ず主治医の指示に従ってください。食べたあとに症状が出たときは、速やかに医療機関を受診してください。