インフルエンザの予防接種って意味あるの?「打ってもかかる」理由と、それでも打つべき3つの根拠

「去年もちゃんと打ったのに、結局インフルエンザになりました」
「ワクチンって、意味あるんですか?」

外来でこう言われることが、毎年あります。

正直な感想だと思います。予防接種を受けるには、子どもを説得して、痛い思いをさせて、13歳未満なら2回も通わなければいけません。それだけのことをして結局かかるのなら、疑問に思って当然です。

結論から言います。意味はあります。
ただしそれは、「打てばかからない」という意味ではありません。
この記事では、インフルエンザワクチンが実際に何をどれだけ減らしてくれるのかを、医学的根拠をもとに数字で正直にお伝えします。

結論:意味はあります。

最初に、いちばん誤解の多いところをはっきりさせておきます。

インフルエンザワクチンは、麻しん(はしか)や風しんのワクチンのような、ほぼ確実に発症を防ぐタイプのワクチンではありません。

では何のために打つのか。
ワクチンの効果は、次の3段階で考えると腑に落ちます。

  • かかっても、入院するほど重症になりにくい
  • ②そもそも、かかりにくくなる
  • ③もしものとき、命を落とすリスクが大きく下がる

「打ってもかかった」という経験は、①をすり抜けたということです。でも、そこで終わりではありません。②と③という、もっと大事な守りが残っています。この記事では、それぞれを数字で見ていきます。

根拠① 発症そのものを、およそ3分の1に減らす

では、実際にどれくらい減るのでしょうか。

世界中の臨床試験を集めて解析したコクラン・レビューでは、健康な子ども(2〜16歳)を対象に、次のように報告されています。

  • ワクチンを打たなかった場合の発症:30%
  • 不活化ワクチンを打った場合の発症:11%

インフルエンザにかかる子がおよそ3分の1に減るという結果です。しかもこれは、エビデンスの確実性が「高い」と評価されている数字です。

3分の1になっても、11%の子はかかります。ゼロにはなりません。だからこそ「打ったのにかかった」という人は必ず出てきます。それでも、かかる子の数が3分の1になるというのは、決して小さな話ではありません。

根拠② かかっても、入院を約4割減らす

ここからが、ワクチンの本当の値打ちです。

アメリカCDCが2026年3月に発表した、2025/26シーズンの中間解析を見てみましょう。18歳未満の子どもと青少年について、次の結果が出ています。

入院に対する有効率:41%

インフルエンザで入院するような重い状態になることを、ワクチンが約4割減らしていた、ということです。

しかもこのシーズンは、近年のなかでは有効率が低めだった年でした。流行したウイルスの型とワクチンの型が、あまりうまく合わなかったのです。それでも入院は4割減っています。「相性の悪い年でもこれだけ」と考えると、心強い数字ではないでしょうか。

根拠③ いちばん大事な数字。亡くなるリスクを約9割減らす

そして、この記事でいちばんお伝えしたい数字です。

2026年に医学雑誌Pediatricsに発表された研究では、アメリカで2016年8月から2025年7月までの9年間に、インフルエンザで亡くなった子ども1,234人が解析されました。その結果が、こちらです。

・死亡に対する有効率:87%

ワクチンを打っていた子は、インフルエンザで亡くなるリスクが約9割低いのです!

「インフルエンザで子どもが亡くなるなんて、めったにないことでしょう」と思われるかもしれません。
その通りです。だからこそ、ふだんは実感しにくい。
けれど、9年間で1,234人という数字は、決して少なくありません。そして、その多くは防げた可能性がある。
私が「それでも打ってください」とお伝えする、いちばんの理由がここにあります。

もし、万が一、自分の子供の命に危機が生じた時、予防接種を打っていなかったら、一生後悔すると思います。

毎年打たないといけないの?

「去年打ったから今年はいいや」と思っていませんか。残念ながら、毎年必要です。理由は2つあります。

理由1:流行する型が毎年変わる
インフルエンザウイルスは少しずつ形を変えていきます。ワクチンは、そのシーズンに流行すると予測された型に合わせて毎年作り直されています。厚生労働省も「昨年接種を受けた方であっても、今年の接種についてご検討ください」としています。

理由2:効果が一年もたない
ワクチンで得られた免疫は、シーズンを越えて続くわけではありません。だから、毎年、流行前に打ち直す必要があります。

いつ、何回打てばいい?

今年(2026/27シーズン)は、例年よりかなり早く流行が始まっています。

厚生労働省の発表によると、2026年8月28日の時点ですでに全国的な流行入り。第34週(8月17〜23日)の定点あたり報告数が1.11となり、流行の目安である1.00を超えました。これは1999年に感染症法にもとづく調査が始まって以来、2番目に早い流行入りです。

接種スケジュールの基本は、次のとおりです。

・生後6か月から接種できます

・不活化ワクチンの場合、13歳未満は2回接種。1回目と2回目のあいだは2〜4週間あけます(免疫がつきやすいのは4週間程度あけたとき)

・ワクチンの効果が出るまでには、接種から2週間ほどかかります

13歳未満のお子さんの場合、2回目を打ち終わって効果が出るまでに、1回目から1か月半ほどかかる計算になります。「流行してから」では間に合いません。今年は流行がすでに始まっているので、早めに予約してください。

ちなみに、他のワクチンと同時に接種することもできます(👉ワクチンの同時接種は大丈夫?)。

注射が苦手な子には、鼻にスプレーするタイプもあります

「注射がどうしてもイヤ」というお子さんには、経鼻ワクチン(フルミスト)という選択肢があります。鼻にシュッとスプレーするだけで済むタイプです。

・対象は2歳以上19歳未満

・1回の接種で済みます(注射は13歳未満だと2回必要)

・弱毒化した生きたウイルスを使う「生ワクチン」です

日本小児科学会は、注射タイプと経鼻タイプを同等に推奨しています。ただし、ご家族に抗がん剤治療中の方や臓器移植後の方など、重い免疫不全の方がいる場合は注射タイプを選んでください。経鼻ワクチンは接種後しばらくウイルスを排出する可能性があるためです。授乳中のお母さんにも注射タイプが推奨されています。

どちらが合うかは、お子さんの年齢や体質、ご家族の状況によって変わります。かかりつけ医に相談してみてください。

よくある質問

Q. 予防接種を受けた直後にインフルエンザになりました。ワクチンのせいですか?
A. 注射タイプ(不活化ワクチン)が原因でインフルエンザを発症することはありません。ウイルスは不活化されていて、増える能力がないためです。効果が出るまでに2週間ほどかかるので、その間に感染してしまったか、接種前にすでに感染していた可能性が高いと考えられます。

Q. 卵アレルギーがありますが、打てますか?
A. 打てます。日本で使われているインフルエンザワクチンに含まれる卵タンパクは1mLあたり数ナノグラム(10億分の1グラム単位)とごくわずかで、卵アレルギーのある人とない人で、接種後の副反応の頻度に差はなかったと報告されています。卵アレルギーは接種の禁忌ではありません。心配な場合は、かかりつけ医に伝えたうえで接種してください。

Q. インフルエンザ脳症も防げますか?
A. ここは正直にお答えします。インフルエンザ脳症を防ぐ効果については、はっきりした根拠がまだありません。厚生労働科学研究の成績では、脳症を発症した患者と、インフルエンザにかかっただけの患者とで、ワクチン接種率に有意な差は認められませんでした。「ワクチンを打てば脳症は防げる」とは言えないのが現状です。ただし、そもそもインフルエンザにかかりにくくなること自体が、脳症を含むあらゆる合併症のリスクを下げる方向に働きます。

まとめ

・インフルエンザワクチンは「打てばかからない」ワクチンではありません。だから「打ったのにかかった」人は必ず出ます

・発症は、およそ3分の1に減ります(30%→11%/確実性の高いエビデンス)

・入院は、約4割減ります。しかも有効率が低めだった年の数字です

・亡くなるリスクは、約9割減ります

・毎年打つ必要があります。今年は例年より早く流行が始まっているので、早めの予約を

痛い思いをさせてまで打つ価値があるのか。その答えは、「かからないため」ではなく「重くしないため、そして命を守るため」にあります。

この冬も、お子さんが元気に過ごせますように。

「うちの子は卵アレルギーだけど、打って大丈夫?」と迷ったら

ここまで、インフルエンザワクチンの効果について解説してきました。ただ、実際に打てるかどうか、いつどのタイプを打つのがいいかは、お子さんの体質や持病によって一人ひとり違います。

なかでも多いのが、「卵アレルギーがあるから、インフルエンザの予防接種はずっと見送ってきた。本当に打って大丈夫なの?」というご相談です。この記事でお伝えしたとおり、卵アレルギーは接種の禁忌ではありません。とはいえ、過去に強い症状が出たことがある、アナフィラキシーを起こしたことがある、という場合は、やはり個別に考える必要があります。文字で「大丈夫です」と読んだだけでは、なかなか踏み切れないですよね。

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※本サービスは医療機関における「診療」ではなく、健康に関する情報提供・相談です。診断・薬の処方・治療方針の決定は行いません。接種の可否の最終判断と実際の接種は、かかりつけの医療機関で行ってください。症状が強いときや緊急性が疑われるときは、速やかに医療機関を受診してください。

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参考文献

・Jefferson T, Rivetti A, Di Pietrantonj C, Demicheli V. Vaccines for preventing influenza in healthy children. Cochrane Database of Systematic Reviews 2018, Issue 2. Art. No.: CD004879. DOI: 10.1002/14651858.CD004879.pub5

・Interim Estimates of 2025-26 Seasonal Influenza Vaccine Effectiveness — United States, September 2025–February 2026. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2026.

・Influenza Vaccine Effectiveness Against Pediatric Death in the United States: 2016–2025. Pediatrics. 2026;158(2):e2026076453.

・Jayasundara K, Soobiah C, Thommes E, Tricco AC, Chit A. Natural attack rate of influenza in unvaccinated children and adults: a meta-regression analysis. BMC Infect Dis. 2014;14:670.

・厚生労働省「令和7年度 急性呼吸器感染症(ARI)総合対策に関するQ&A」

・厚生労働省 感染症発生動向調査(2026年8月28日発表)

・日本小児科学会「2025/26シーズンのインフルエンザ治療・予防指針」

・厚生労働科学研究「インフルエンザ脳症の発症因子の解明と治療及び予防方法の確立に関する研究」

※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。お子さんの年齢や体質、基礎疾患によって適切な対応は異なります。予防接種を受けられるかどうか、いつ何回受けるかについては、自己判断せず、必ずかかりつけの医師・医療機関にご相談ください。接種後に気になる症状が出たときも、早めに医療機関へご連絡ください。