生後2か月、いよいよ予防接種デビュー。母子手帳のスケジュールを見て「え、一度にこんなに打つの?」と驚いた方も多いのではないでしょうか。
「小さな体に、一度に何本も…かわいそう」「免疫が負けてしまわない?」「副反応が増えたりしない?」——そんな不安を感じるのは、お子さんを大切に思うからこそ。この記事では小児科専門医が、その不安に一つずつ、やさしくお答えしていきます。
そもそも「同時接種」とは? 生後2か月・1歳ではこんなに打ちます
同時接種とは、2種類以上のワクチンを同じ日に接種することです。日本の標準的な定期接種スケジュールでは、たとえば次のように複数のワクチンを同時に接種します。
- 生後2か月:注射3本(5種混合・肺炎球菌・B型肝炎)+ ロタウイルス(飲むワクチン)
- 1歳:注射5本(肺炎球菌・5種混合・MR(麻しん風しん)・水痘・おたふくかぜ)
こう聞くと、驚く方が多いのも当然です。でも、これには「赤ちゃんを早く確実に守る」という大切な意味があります。
「かわいそう」「負担では?」と不安になって当然です
一度にたくさんの注射を受ける赤ちゃんを見て、心が痛むのは自然なことです。「免疫が負けない?」「副反応が増えない?」と心配になるのも当たり前。

その不安をそのままにせず、医学的な事実で一つずつ解消していきましょう。
安心の理由① 同時接種は「世界の標準」
同時接種は、日本小児科学会・アメリカ小児科学会(AAP)・WHO(世界保健機関)がいずれも推奨する、世界で標準的な医療行為です。
日本小児科学会は、同時接種を「必要な医療行為」と位置づけ、同時に接種できるワクチンの本数に原則として制限はない、としています。
安心の理由② 赤ちゃんの免疫は負けない(使うのはわずか0.1%)
「一度にたくさん打つと、免疫が疲れてしまうのでは?」という心配は、とてもよく聞かれます。しかし、これは心配いりません。
赤ちゃんの免疫システムは、生まれた瞬間から、空気・母乳・指しゃぶりなどを通じて無数の細菌やウイルスに毎日さらされ、それに対応しています。ワクチンに含まれる抗原の数は、この日常的な曝露に比べればごくわずかです。
実際、理論的な試算では、仮に10本のワクチンを同時に接種しても、使われるのは赤ちゃんの免疫全体のおよそ0.1%程度とされています。免疫には、それだけ大きな余力があるのです。
つまり「何本打っても、免疫の負担にはほとんどならない」と言えます。
安心の理由③ 効果は下がりません
「同時に打つと、お互いのワクチンが邪魔し合って効きが悪くなるのでは?」——これも心配ありません。
複数のワクチン(生ワクチンを含む)を同時に接種しても、それぞれのワクチンの有効性が下がる(相互干渉する)ことはないことが確認されています。1本ずつ接種したときと、得られる効果は変わりません。
安心の理由④ 副反応も増えません
「打つ本数が増えれば、その分だけ副反応も増えるのでは?」と思われがちですが、そうではありません。
同時接種をしても、副反応の頻度や内容が、単独で接種したときと比べて増えることはないとされています。本数の分だけ発熱などが上乗せされる、ということはありません。
同時接種による健康上のデメリットはありません
ここまでをまとめると、同時接種によって生じる健康上のデメリットは特にありません。一方で、次に述べるように「別々に打つ」ことには、はっきりとしたデメリットがあります。
むしろ「別々」に打つほうがリスクになる
「念のため、1本ずつ様子を見ながら…」と考える方もいます。しかし、これはかえってお子さんのリスクになりかねません。
・ワクチンを1本ずつ打っていくと、すべて打ち終わるまでに何か月もかかります。
・その間、本来なら守られていたはずの病気に、赤ちゃんが無防備なままさらされ続けます。
・通院の回数が増えて保護者の負担も大きくなり、接種のし忘れ・遅れも起こりやすくなります。

同時接種には、こうした「無防備な期間」を短くして、赤ちゃんを早く・確実に守るという大きなメリットがあります!
まとめ:安心して同時接種を
・同時接種は日本小児科学会・WHOも推奨する世界の標準
・何本打っても免疫の負担にならない(使うのは免疫全体の約0.1%)
・効果は下がらず、副反応の頻度・内容も増えない
・同時接種による健康上のデメリットはない
・むしろ別々にするほうが、無防備な期間が延びてリスク
同時接種は、赤ちゃんを病気から早く確実に守るための、安全で大切な方法です。不安なことがあれば、遠慮なくかかりつけの先生に相談してくださいね。
よくある質問
Q. 同時に打てる本数に上限はありますか?
A. 医学的には、同時接種できるワクチンの本数に原則として制限はありません。接種部位(腕や太ももの数)などの実際的な理由で本数が決まることはあります。
Q. 発熱しやすくなりませんか?
A. 同時接種でも、副反応(発熱など)の頻度は単独接種と変わりません。
Q. どうしても不安です。
A. 遠慮なくかかりつけの小児科医にご相談ください。お子さんの状況に合わせて説明してもらえます。
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参考文献
1. 日本小児科学会「予防接種の同時接種に対する考え方」
2. American Academy of Pediatrics. Red Book 2024-2027「Simultaneous Administration of Multiple Vaccines」
3. Offit PA, et al. Addressing parents concerns: do multiple vaccines overwhelm or weaken the infant immune system? Pediatrics. 2002;109(1):124-129.
4. Institute of Medicine (IOM). Immunization Safety Review: Multiple Immunizations and Immune Dysfunction. 2002.
5. World Health Organization (WHO). 予防接種に関する推奨.
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。お子さんの体調や基礎疾患によって最適な接種方法は異なります。実際の接種にあたっては、必ずかかりつけの医師にご相談ください。