「湿疹」と「食物アレルギー」の関係を小児科専門医が解説
食物アレルギーの原因は「皮膚の湿疹」って本当?
赤ちゃんの皮膚に湿疹やアトピー性皮膚炎があると、食物アレルギーになりやすくなるといわれています。
ただし、誤解してほしくないのは、
湿疹がある=食物アレルギーがある
という意味ではありません。
赤ちゃんの肌が荒れている状態だと、皮膚から食べ物の成分が体に入り、食物アレルギーのきっかけになることがある、ということです。
この仕組みを、医学の専門用語では経皮感作といいます。
この記事では、小児科専門医が分かりやすく、湿疹と食物アレルギーの関係を解説していきます。
卵を例にして、説明していきます!!
卵料理をすると、部屋中に目に見えない小さな卵成分が舞う
ご家庭で卵を焼いたりすると、目に見えない小さな卵の成分が部屋中に舞い、手やテーブル、床、空気中のほこりなどに付着します。

湿疹のある皮膚からは卵の成分が体内に侵入してくる
赤ちゃんの皮膚がきれいな状態であれば、皮膚のバリア機能がしっかり守ってくれるので、部屋中に広がった卵の成分が皮膚についても体内には侵入してきません。
しかし、湿疹がある状態では、皮膚のバリア機能が壊れているため、卵の成分が皮膚から体の中に入りやすくなります。

皮膚から侵入してきたものは敵だと勘違いしてしまう
人間の体は、皮膚から入ってきたものを「外敵」と判断しやすい仕組みになっています。
本来、食べ物は口から入り、胃や腸で消化されるものです。ですので、口から入って、消化・吸収されて体内に入ってくるものは、「安全な栄養」と免疫細胞は覚えてくれます。
ところが、皮膚から食べ物の成分が入ってくると、免疫細胞はそれを「食べ物」ではなく、「外から侵入してきた外敵」と勘違いしてしまうことがあります。
つまり
湿疹のある皮膚から卵成分が侵入してくると、体の中の免疫細胞は
「皮膚から入ってきたこの卵は、外敵だ!危険なものだ!!」
と勘違いしてしまうのです。

*このように、食べ物の成分が皮膚から入ることで、その食べ物に対してアレルギー反応を起こしやすい状態になることを、医学の専門用語で経皮感作といいます。(名前はおぼえなくても大丈夫です!)
免疫細胞が勘違いした状態で卵を食べると…
乳児期に湿疹があり、皮膚から卵成分が侵入して、赤ちゃんの免疫細胞が「卵は危険な外敵だ」と勘違いしてしまっている状態で、生後5か月・6か月になり、離乳食で卵を食べるとどうなるでしょうか。
外敵が侵入してきたことを知らせるために「皮膚のブツブツ」が出たり、外敵を外に排泄するために「咳」や「嘔吐」といった症状が出ます。

これが食物アレルギーです。
正常な皮膚は、身体の外から菌やアレルギー物質が侵入するのを防いでいる
皮膚は、ただ体を覆っているだけではありません。
外からウイルス、細菌、ほこり、ダニ、食べ物の成分などが体の中に入らないように
バリアの役割をしています。
正常な皮膚では、このバリアがしっかり働いているため、外からの刺激や異物が簡単には体の中に入れません。
ところが、湿疹がある皮膚では、このバリアの機能が弱くなっています。
赤くなっている、カサカサしている、ジュクジュクしている、かゆみがある。
こうした状態では、皮膚のすき間から食べ物の成分が入り込みやすくなります。
それにより免疫細胞の「勘違い」が起こってしまい、食物アレルギーにつながることがあると言われています。
湿疹がある場合は、食べるのを遅らせた方がいい?
そんなことはありません!
ここで大事なのは、
湿疹があるから卵を食べさせてはいけない
という意味ではないことです。
むしろ最近の考え方では、食物アレルギー予防のために、離乳食の開始時期や卵などの開始を不必要に遅らせることは推奨されていません。
日本小児アレルギー学会のガイドラインでも、食物アレルギー予防のために、離乳食開始や鶏卵などの摂取開始を遅らせることは推奨されないとされています。
ただし、湿疹が強い赤ちゃんでは注意が必要です。
大切なのは、
湿疹を放置したままにしないこと
塗り薬で皮膚をきれいな状態に整えること
心配な場合は小児科医師と相談しながら、安全に離乳食を進めること
です。
特にアトピー性皮膚炎のある乳児では、湿疹をしっかり治療したうえで、適切な時期から加熱卵を少量ずつ開始することが、鶏卵アレルギーの発症予防に役立つ可能性が示されています。
赤ちゃんの湿疹は「そのうち治る」と放置しない
赤ちゃんの湿疹はよくある症状です。
ただ、
「赤ちゃんはみんな湿疹が出るもの」
「そのうち治るから大丈夫」
と長く放置するのはおすすめしません。
湿疹が続いている状態は、皮膚のバリアが乱れている状態です。
食物アレルギーを予防する意味でも、すでにある湿疹を治す意味でも、赤ちゃんの皮膚をきれいに保つことはとても大切です。
赤み、かゆみ、ジュクジュク、掻いた痕がある場合は、小児科で相談しましょう。
家庭でできる基本のスキンケア
赤ちゃんの肌をきれいに保つためには、毎日のスキンケアが大切です。
基本は、
やさしく洗う
しっかり保湿する
湿疹があるときは治療する
の3つです。
お風呂では、ゴシゴシこすらず、泡でやさしく洗います。
洗ったあとは、タオルでこすらず、押さえるように水分を拭き取ります。
そのあと、乾燥しやすい部位を中心に保湿剤をたっぷり塗ります。
ただし、赤みやかゆみが強い湿疹は、保湿だけでは改善しないことが多いです。
その場合は、小児科を受診し、必要に応じてステロイド外用薬などで炎症をしっかり抑えることが大切です。
まとめ:食物アレルギー予防には、赤ちゃんの肌をきれいにすることが大切
赤ちゃんの湿疹と食物アレルギーには関係があります。
湿疹がある皮膚では、バリア機能が弱くなり、卵などの食べ物の成分が皮膚から入りやすくなります。
体がそれを「外敵」と勘違いすると、食物アレルギーにつながる可能性があります。
食物アレルギーを予防するためにも、すでにある湿疹を治すためにも、乳児期から赤ちゃんの皮膚をきれいに保つことはとても大切です。
湿疹が続く、赤みが強い、かゆそう、ジュクジュクしている、保湿してもよくならない。
そんなときは、自己判断で様子を見続けず、小児科や皮膚科で相談してください。
免責事項
記事の内容について、専門家から見れば本当はちょっと説明不足な部分や、強調しすぎている部分もありますが、ママ・パパにできるだけわかりやすくお伝えするため、このような形で説明しています。
この記事は、一般的な医療情報の提供を目的としたものです。
個別の診断や治療を行うものではありません。
赤ちゃんの湿疹や食物アレルギーの対応は、月齢、症状の強さ、湿疹の状態、これまでに食べた食品、アレルギー症状の有無によって異なります。
判断に迷う場合や症状が強い場合は、かかりつけ医、小児科、皮膚科、アレルギー専門医に相談してください。