子どもの花粉症は治せる時代? 舌下免疫療法の効果・期間・始めどきを小児科専門医が解説

「毎年冬〜春になると、鼻水と目のかゆみで集中できなくて」
「薬は飲ませているけど、これって一生続けるんでしょうか」

外来でよく聞く声です。花粉症の薬は確かによく効きます。ただ、飲むのをやめれば症状はまた出てきます。毎年、毎シーズン、同じことのくり返しです。

その「くり返し」から抜け出す方法があります。舌下免疫療法(ぜっかめんえきりょうほう)です。しかも、5歳から始められます。

ただし、3年から5年という長い期間が必要ですし、始められる時期も限られています。

現在子供のスギ花粉症が非常に増えていきています(詳しくは👉子どもでも花粉症になる?風邪との見分け方・薬・受診目安を小児科専門医が解説

この記事では、舌下免疫療法が実際にどれくらい効くのか、何を覚悟して始める必要があるのかを、日本で得られたデータをもとに、正直にお伝えします。

結論:薬とは「目的」が違う治療です

最初に、いちばん大事なところをはっきりさせておきます。

花粉症の飲み薬(抗ヒスタミン薬など)は、出てしまった症状を抑えるための薬です。鼻水やくしゃみをブロックしてくれますが、アレルギーそのものをなくすわけではありません。だから、やめれば戻ります。

一方、舌下免疫療法は、アレルギーの原因物質そのものをごく少量ずつ体に入れ続けることで、体をその物質に慣れさせていく治療です。目指しているのは症状の抑制ではなく、アレルギー反応を起こしにくい体質そのものへの変化です。

この「体質に働きかける」という点が、ほかの花粉症治療にはない特徴です。アレルギー疾患のなかで、根本的に解決しうる治療は、いまのところこれだけです。

舌下免疫療法とは? やり方はとてもシンプル

やることは単純です。

スギ花粉の成分をごく少量だけ含んだ錠剤を

  • 1日1回
  • 舌の下に1分間置く
  • 1分経ったら、飲み込む

これだけです。簡単に毎日おうちで続けられます。

ひとつだけ注意点があります。
1回目だけは、必ず医療機関で医師の目の前で飲みます。まれに強いアレルギー反応が出ることがあるためです。2回目以降は自宅で続けられます。

どのくらい効くの? つらさが「90点」から「10点」に

いちばん気になるところだと思います。日本で2026年に発表された、実際の診療にもとづく報告を紹介します。

スギ花粉の舌下免疫療法を3年以上続けて終了した200人の患者さんに、アンケート調査が行われました。

花粉症のつらさを0点から100点で表してもらったところ、結果はこうでした。

  • 治療を始める前:90点
  • 治療を続けたあと:10点

簡単にいうと、つらさが9割方消えた、という感覚に近い結果でした。

もうひとつ、別の報告も紹介します。治療3年目の112人を調べたところ、33%の人が「花粉症の薬をまったく使わずに、鼻の症状もほとんどない」状態でシーズンを過ごせていました。

3人に1人が、薬すら必要なくなる。これが3年続けたときに到達しうる姿です。

やめた後も、効果は続くの?

薬とのいちばん大きな違いがここです。舌下免疫療法は、やめた後も効果が残ります。

先ほどと同じ調査で、治療を終えた後の状態が追跡されています。「治療終了時の良い状態を保てていた人」の割合は、次のとおりでした。

  • 終了から1年後:61%
  • 2年後:59%
  • 3年後:52%
  • 4年後:34%

1年後でも6割、3年後でも半数が、良い状態を保てていました。つらさの点数でみると、治療終了時の10点に対し、やめた後のシーズンは20点。多少は戻るものの、治療前の90点には遠くおよびません。

ただし4年たつと3割まで下がります。この報告の結論は「効果の持続を期待するなら、4〜5年の長期治療が望ましい」というものでした。

つまり、長く続けた人ほど、やめた後も長く恩恵を受けられるということです。

*ダニのアレルギーについては、さらに長い持続が知られています。診療ガイドラインでは、ダニ単独のアレルギーに3〜5年治療を行うと、7〜8年間有効だったと記載されています。

続ける期間は3〜5年。ここが一番のハードルです

ここまで読んで「思ったより効きそうだ」と感じていただけたかもしれません。ただ、正直にお伝えしなければならないことがあります。長いです。

診療ガイドラインでは、3〜5年の継続が推奨されています。

しかも、効いているかどうかがわかるのは、最初の花粉シーズンを1回こえてからです。飲み始めて1か月で「効いてきた」という実感は、基本的にありません。

この点を知らずに始めると、「毎日飲んでいるのに変わらない」と感じて、最初のシーズンでやめてしまうことがあります。これが、いちばんもったいないパターンです。

逆に言えば、「最初の1シーズンは効果判定の期間」と割り切れれば、続けやすくなります。お子さんと一緒に始めるなら、この見通しを最初に共有しておくことをおすすめします。

【重要】始められる時期が決まっています

見落とされがちですが、実務上いちばん重要なポイントです。

スギ花粉の舌下免疫療法は、スギ花粉が飛んでいる時期に新しく始めることができません。

理由は安全性です。花粉が飛んでいる時期は、体がスギ花粉に対して過敏になっています。そのタイミングで治療を始めると、副作用が強く出るおそれがあるためです。薬の添付文書にも「スギ花粉飛散時期は新たに投与を開始しないこと」と明記されています。

実務上、新しく始められるのは、おおよそ6月から12月の間です。

スギ花粉が飛散して花粉症の症状が辛く「なんとか治したい」と思っている時期には、舌下免疫療法を開始できないのです。

逆に言えば、夏〜秋は舌下免疫療法を始める絶好のタイミングです。

なお、すでに治療を続けている人は、シーズン中も飲み続けます。制限されるのは「新しく始めること」だけです。

何歳から受けられる?

原則5歳以上です。

5歳未満を対象とした臨床試験が行われていないため、この年齢が目安になっています。ただし年齢だけで決まるわけではなく、実際には「錠剤を舌の下に1分間、きちんととどめておけるか」が判断のポイントになります。5歳を過ぎていても、それが難しいお子さんの場合は見送ることがあります。

「子どもだから効きにくいのでは」と心配される方もいますが、その必要はありません。小児は成人と同じ用法・用量で治療でき、副反応の出る割合も成人と変わらず、1年目の効果も同等だったと報告されています。

副作用は?

いちばん多いのは、口の中の症状です。

  • 口の中のかゆみ、イガイガ
  • のどの刺激感、違和感
  • 耳のかゆみ

これらは比較的多くの方に起こります。
飲み始めの時期に出やすく、多くは軽度で、続けているうちに自然におさまっていきます。

重い副作用として、ショックやアナフィラキシーの記載があります。頻度は不明とされており、実際にはきわめてまれです。国内で行われた臨床試験では、死亡例もアナフィラキシーの発現例も報告されていません。

とはいえゼロではないため、1回目は必ず医療機関で飲み、医師の観察のもとで様子を見ることになっています。

ダニのアレルギーにも舌下免疫療法があります

ここまでスギ花粉の話をしてきましたが、ダニによるアレルギー性鼻炎にも舌下免疫療法があります。

ダニは1年じゅう家の中にいるため、症状も通年で続きます。「季節に関係なく、いつも鼻がぐずぐずしている」というお子さんは、スギ花粉ではなくダニが原因かもしれません。

ダニの舌下免疫療法には、スギにはない利点があります。季節による開始時期の制限がないため、1年のいつでも始められます。

スギとダニの両方にアレルギーがあるお子さんも少なくありません。その場合は、両方の舌下免疫療法を併用できます。

自分の子が何にアレルギーを持っているかは、血液検査で調べられます。ただし、検査で陽性でも症状が出ていなければ治療の対象にはなりません(👉血液検査で陽性、これってアレルギー?)。検査結果と実際の症状を照らし合わせて判断します。

よくある質問

Q. 舌下免疫療法をすれば、花粉症は完全に治りますか?
A. 全員が完全に治るわけではありません。ただ、完全になくならなくても、日常生活で困らない程度まで軽くなる人は、かなり多くいます。

Q. 飲み忘れてしまいそうです。
A. 歯みがきや朝食など、毎日必ず行うことと組み合わせるのがコツです。数日忘れた程度で効果がなくなるわけではありませんので、一般的な範囲であれば、たまに飲み忘れるくらいなら大丈夫です。

Q. 途中でやめたらどうなりますか?
A. 治療期間が短いほど、効果の持続は短くなります。3年以上続けた人でも4年後には3割まで下がっていたことを考えると、1年でやめた場合の持続はさらに限られると考えられます。始めるなら、3年以上続ける前提で計画してください。

Q. 大人も受けられますか?
A. 受けられます。親子で一緒に始める方もいらっしゃいます。

まとめ

・舌下免疫療法は、症状を抑える薬とは違い、アレルギーの体質そのものに働きかける治療です

・日本の報告では、つらさが100点満点で90点から10点まで下がっていました(中央値)

・3年続けた人の33%は、薬なしでほとんど症状のない状態になっていました

・やめた後も1年で61%、3年で52%が良い状態を保てていました

・続ける期間は3〜5年。効果がわかるのは最初のシーズンをこえてからです

・原則5歳から。小児でも成人と同等の効果と安全性が報告されています

・スギは花粉が飛んでいる時期に始められません。始められるのは6〜12月ごろです

毎年くり返す花粉症を、薬でしのぎ続けるのか。それとも、数年かけて体質そのものに働きかけてみるのか。どちらが正解ということはありません。

ただ、ひとつだけ確かなことがあります。始められる時期は限られている、ということです。春につらい思いをしてから動き出しても、スギ花粉が飛ばなくなるまでは始められません。

お子さんのスギ花粉症について「そろそろ何か手を打ちたい」と感じているなら、夏・秋が、動き出すのにいちばん適した時期です。

「うちの子も舌下免疫療法を始めていいの?」と思ったら

ここまで、子どもの舌下免疫療法について解説してきました。ただ、実際に始めるべきかどうか、いつ始めるのがいいかは、お子さんの年齢や症状の重さ、何にアレルギーがあるかによって一人ひとり違います。

なかでも多いのが、「血液検査でスギが陽性と言われたけれど、うちの子の症状で治療まで必要なのかがわからない」というご相談です。検査で陽性でも、症状が軽ければ様子を見るという判断もあります。逆に、毎年春に集中できずに困っているなら、始める価値は十分にあります。

迷った時には、たっち先生のオンライン健康相談をご利用ください。たっち先生本人が、ビデオ通話で時間をとってお話をうかがいます。

  • 血液検査の結果を見ても、治療が必要なレベルなのか判断がつかない
  • 3〜5年続けられるか不安で、始めるかどうか迷っている
  • スギとダニの両方があり、どちらから始めるべきか相談したい
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参考文献

・湯田厚司ほか. スギ花粉舌下免疫療法終了後の効果維持の検討. アレルギー. 2026;75(2):132-141.

・湯田厚司ほか. スギ花粉症舌下免疫療法の治療3年目112例の臨床効果. アレルギー. 2017;66(9):1172-1180.

・湯田厚司. 舌下免疫療法―成人および小児季節性アレルギー性鼻炎の克服を目指して―. 日本耳鼻咽喉科学会会報. 2020;123(2):113-117.

・鼻アレルギー診療ガイドライン2024年版(第10版)

・医薬品医療機器総合機構(PMDA)審査報告書「シダキュアスギ花粉舌下錠2,000JAU、同5,000JAU」

・シダキュアスギ花粉舌下錠 添付文書(鳥居薬品)

・Valovirta E, et al. Results from the 5-year SQ grass sublingual immunotherapy tablet asthma prevention (GAP) trial in children with grass pollen allergy. J Allergy Clin Immunol. 2018;141(2):529-538.

・松原篤ほか. 鼻アレルギーの全国疫学調査2019. 日本耳鼻咽喉科学会会報. 2020;123(6):485-490.

※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。お子さんの年齢や体質、基礎疾患によって適切な対応は異なります。舌下免疫療法を受けられるかどうか、いつ始めるかの判断は、必ずかかりつけの医師・医療機関にご相談ください。また、薬は必ず医師の指示に従って使用してください。