エピペンはいつ打つ?打つべき13の症状と、迷ったときの考え方

こんにちは、たっち先生です。

毎日の育児、本当にお疲れ様です。

食物アレルギーのあるお子様に「エピペン」を処方されている保護者の方は多いと思います。ただ、実際に処方されても、

「今まで注射なんて人に打ったことがない」

「いざ目の前でお子様がアナフィラキシーになったとき、本当にこれで打ってもいいのかな」

と、かなり迷ってしまう方がほとんどではないでしょうか。実際、エピペンは「打つべきかどうか」の判断そのものが一番のハードルになりやすい薬です。

今日は、いざという時に落ち着いて判断できるよう、小児科医の視点で「エピペンを打つべき13の症状」と「迷ったときの考え方」を詳しく解説します。

エピペンとは

エピペンは、アナフィラキシー(重いアレルギー反応)が起きたときに、太もの筋肉に注射して使う「アドレナリン自己注射薬」です。食物アレルギーでアナフィラキシーを起こすリスクが高いと医師が判断したお子様に処方されます。

普段の生活で「注射を人に打つ」という経験がある保護者の方はほとんどいません。それなのに、いざという時にはご自身の判断で、しかも慌てた状況の中で注射をしなければならない。これが、エピペンを「かなり迷う薬」にしている一番の理由です。

だからこそ、事前に「どんな症状が出たら打つべきか」をはっきりと知っておくことが、いざという時の助けになります。

ちなみに、注射する場所は、太ももの前面の外側です。ズボンの上からでOKです。

定期的に思い出そう:エピペンを打つべき13の症状

エピペンを打つべきかどうかは、体の場所ごとに現れる症状で判断します。次の13の症状のうち、1つでも当てはまれば、すぐにエピペンを打ってください。

お腹の症状

繰り返し嘔吐する
② すごくおなかを痛がる

呼吸器の症状

のどが締め付けられる
④ 声がかすれる
⑤ 犬が吠えるような咳
⑥ たくさん咳が出る
⑦ ゼーゼーする呼吸
⑧ 息がしにくい

全身の症状

⑨ 唇や爪が青白い
⑩ 脈が触れにくい
⑪ 尿や便をもらす
⑫ 意識がもうろうとしている
⑬ ぐったりしている

難しく考える必要はありません。この13の症状のうち、1つでも当てはまれば、すぐにエピペンを打ってください。これが基本のルールです。

それでも判断に迷うことはたくさんある

13の症状を知っていても、実際の場面では、

  • 顔色が悪いような気がするけど、真っ青ではないかも…
  • ちょっとゼーゼーしているけど、そこまで強くないしなあ…

というように、白か黒かはっきりしない「グレーゾーン」の症状で迷うことが、実はとても多いです。

そんな時は、ぜひ「迷ったら打つ」を心がけてください。ここからは、なぜ「迷ったら打つ」でよいのか、その理由を説明します。

「迷ったら打つ」をおすすめする3つの理由

① そもそもエピペンが処方されている時点で「ハイリスク」と判断されている

エピペンが処方されているお子様は、その時点ですでに医師から「アナフィラキシーで命に関わるリスクが高い」と判断されています。その子はもともとハイリスクな体質であることを忘れないでください。

② アドレナリンの重篤な副作用は、ほとんど心配いらない

エピペンの中に入っている薬剤は「アドレナリン」です。このアドレナリンは比較的安全に使用できる薬剤で、正しい場所(太ももの外側)に注射できれば、アドレナリンによる重篤な副作用はほとんど心配いりません。一時的に動悸や震え、顔色の変化が出ることはありますが、いずれも数分〜数十分でおさまる軽いものがほとんどです。

③ 「打たなかった場合」のデメリットの方がずっと大きい

次の2つのケースを比べてみましょう。

  • 本当はエピペンが必要だったのに、怖くて投与できなかった場合
  • そこまで重症ではなかったけれど、エピペンを投与した場合

前者は、アナフィラキシーの進行を止められず、命に関わる危険性があります。一方、後者で起こりうることは、軽い動悸や震えといった一時的な症状程度です。

つまり、「投与しないデメリット」の方が、「(重症でない場面で)投与してしまうデメリット」よりもはるかに大きいのです。これが、迷ったときには打つべきだと考える一番の理由です。

エピペンを打つ前後で一番大事なこと:「横になる」

13の症状に気づいてエピペンを打つ(打とうとする)とき、実はそれと同じくらい大事なことがあります。それは、できるだけ早く体を横にする、つまり「安静を保つ体位」をとることです。

アナフィラキシーが進むと、血圧が急激に下がります。横になるのは、脳に血液を送ることを最優先にするためです。

反対に、症状が出ている最中に急に立ち上がったり座ったりすると、それだけで数秒のうちに急変してしまうことがあります。学校などで「大丈夫か、保健室に行けるか」と本人に歩かせてしまうのは、実はとても危険な対応です。

13の症状が一つでもある場合には、すぐに横になり、立ち上がらないことを心がけてください。

体位のとり方は、症状によって変える

  • ぐったりしている場合:あおむけに寝かせ、足を30cmほど上げる(血液を心臓・脳に戻しやすくするため)
  • 吐いている場合:顔と体を横に向ける(回復体位)。あおむけのままだと、吐いたものがのどに詰まって窒息するおそれがある
  • 呼吸が苦しくて横になれない場合:無理に寝転ばせず、後ろにもたれるなど本人が一番楽な姿勢で安静にする

共通して大切なのは、「立たせない」「歩かせない」ことです。トイレに行きたがったり、自分で動けそうに見えても、絶対に歩かせず、その場で横にしたまま対応してください。

エピペンを打った後にすべきこと

エピペンを使ったあとも、次の対応を必ず行ってください。

  • 安静を保つ体位(上記の横向き・あおむけなど)をそのままキープする
  • 症状が軽くなったように見えても、必ず救急車を呼ぶ(119番通報)
  • エピペンを投与した時刻を記録しておく
  • 使用済みのエピペンは、そのまま病院に持って行く

エピペン(やネフィー)の効果は15〜20分程度しか続きません。そのため、一度症状が軽くなっても、効果が切れる頃に症状がぶり返してくることがあります。効果が切れる前に病院に到着できるかどうかが、命を守る分かれ目になります。

また、救急車を待つ間に症状がぶり返してきた場合や、1本目のエピペンを打っても症状が改善しない場合には、2本目の投与を検討してください。

新しい選択肢「ネフィー(neffy)」とは

ちなみに、最近発売された「ネフィー」という薬剤もあります。ネフィーは、注射ではなく鼻にスプレーするタイプのアドレナリン製剤です。

投与するタイミングや作用は、基本的にエピペンとほぼ同じです。ネフィーを処方されている方も、ここまで説明してきた13の症状が1つでもあれば、同じように迷わず投与してください。

注射に対する抵抗感が強いお子様や保護者の方にとっては、選択肢の一つになる薬剤です。「打つべきタイミング」の考え方はエピペンと変わりません。

よくある質問

Q. 13の症状のうち、1つだけでもエピペンを打っていいですか?

A. はい。13の症状のうち1つでも当てはまれば、迷わずエピペンを投与してください。すべて揃うのを待つ必要はありません。

Q. 症状が軽そうなのに打ってしまったら、副作用が心配です。

A. 正しい場所に注射できていれば、アドレナリンの重篤な副作用はほとんど心配いりません。一時的な動悸や震えが出る程度で、多くは自然におさまります。判断に迷う場面では、打たないリスクの方が大きいと考えてください。

Q. エピペンを打ったあと、症状が良くなったら病院に行かなくていいですか?

A. いいえ。症状が良くなったように見えても、必ず救急車を呼び、医療機関を受診してください。数時間後に症状がぶり返す「二相性反応」が起こることがあります。

Q. ネフィーとエピペン、どちらが処方されるかは選べますか?

A. どちらが適しているかは、お子様の状況やかかりつけ医の判断によります。主治医と相談して決定してください。作用や「打つべきタイミング」の考え方は基本的に同じです。

まとめ 「迷ったら打つ」を合言葉に

エピペンを打つべき13の症状は、次の通りです。

  • お腹の症状:①繰り返し嘔吐する ②すごくおなかを痛がる
  • 呼吸器の症状:③のどが締め付けられる ④声がかすれる ⑤犬が吠えるような咳 ⑥たくさん咳が出る ⑦ゼーゼーする呼吸 ⑧息がしにくい
  • 全身の症状:⑨唇や爪が青白い ⑩脈が触れにくい ⑪尿や便をもらす ⑫意識がもうろうとしている ⑬ぐったりしている

この13の症状のうち、1つでも当てはまれば、すぐにエピペンを打ってください。

そして、症状がはっきりしないグレーゾーンで迷ったときも、「迷ったら打つ」を思い出してください。エピペンが処方されている時点でお子様はハイリスクであること、アドレナリンの重篤な副作用はほとんど心配いらないこと、そして打たないデメリットの方がずっと大きいことを、ぜひ覚えておいてください。

そしてもう一つ、エピペンを打つ・打たないと同じくらい大切なのが「横になる」ことです。ぐったりしていればあおむけで足を上げる、吐いていれば顔と体を横に向ける、立たせたり歩かせたりしない。この体位を守るだけで救える命があります。

いざという時に慌てないためにも、この記事をブックマークして、定期的に読み返しておいてくださいね。

免責事項

この記事は、一般的な医療情報の提供を目的としたものです。個別の診断や治療を行うものではありません。

実際の投与判断は、お子様の年齢、基礎疾患、処方内容、症状の経過によって異なります。判断に迷う場合や、処方内容について不明な点がある場合は、かかりつけ医にご相談ください。

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「エピペン、本当にこれで打っていいの?」と迷ったときの目安を、動画でわかりやすくまとめています。
たっち先生 エピペン打つべき症状わかる!?

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たっち先生 小児科専門医/2児のパパ。子どもの病気についてわかりやすく解説する情報を、InstagramやブログなどSNSで発信中。毎日の育児、本当にお疲れさまです。一緒に子どもの病気について学んでいきましょう。