FPIES(食物蛋白誘発胃腸炎)ってなに? 卵黄を食べて2〜4時間後に嘔吐…|症状・受診の目安・治るまでを小児科専門医が解説

「お昼に卵黄をあげたら、2時間くらいたってから急に何度も吐いた。顔色も悪くてぐったりしていたけれど、夕方にはケロッと元気になった。」

離乳食の卵黄デビューのあと、こんな経験をして「胃腸炎?それとも卵のせい?」と迷った方はいませんか。

それは、FPIES(エフパイス/食物蛋白誘発胃腸炎)という病気かもしれません。じんましんも出ず、血液検査でも見つからないため、気づかれにくい特殊なアレルギーです。

この記事では、FPIESの特徴、すぐ受診すべきサイン、診断のつけ方、そして「また食べられるようになるのか」までを、小児科専門医が解説します。

FPIES(エフパイス)とは

FPIESは、腸で起こる、ちょっと特殊なアレルギーです。

典型的には、こんな経過をたどります。

  • 卵黄を食べる(食べたときは、いつもどおり元気)
  • 2〜4時間ほどたってから、急に吐く。何度かくり返し吐く
  • その数時間後には、嘔吐がピタッと止まって、ケロッと元気になる

原因の食べ物は、日本ではほとんどが卵黄です。ただ、大豆や小麦、牛乳、魚などが原因になることもあります。

腸で起こるアレルギーなので、じんましんや咳は一切出ません。そして、食べてから症状が出るまでの時間が長いのが大きな特徴です。

普通のアレルギーとどこが違うの?

みなさんがイメージする食物アレルギーは、食べてから1時間以内に、じんましんや咳、嘔吐などの症状が出るものだと思います。正式には「即時型アレルギー」といって、食物アレルギーのほとんどがこのタイプです(👉子どもの食物アレルギー|食べた後に出る症状と受診目安を小児科医が解説)。

一方のFPIES(エフパイス)は、まったく違うしくみで起こります。食べてから2〜4時間後に、嘔吐や下痢などお腹の症状だけが出ます。じんましんや咳は出ません。

違いをまとめると、こうなります。

  • 普通の食物アレルギー:食べて1時間以内/じんましん・咳・嘔吐など/血液検査が参考になる
  • FPIES:食べて2〜4時間後/嘔吐や下痢などお腹の症状だけ/血液検査ではわからない

原因はほとんど卵黄。卵デビューの時期に多い

ここ数年、卵黄が原因のFPIESがとても増えています。

卵が原因の子は、生後7か月ごろに発症することが多く、ちょうど離乳食で卵黄を始める時期と重なります。

卵デビューを「平日の日中」におすすめしているのは、こうして数時間たってから症状が出ても、小児科が開いているうちに相談できるからです(👉離乳食の卵デビュー、注意点は4つ|固ゆで20分・卵黄から・平日の日中・体調のいい日を小児科専門医が解説)。

血液検査ではわからない。だから「メモ」が大切です

普通の食物アレルギーでは、血液検査が参考になります
でもFPIESは、血液検査をしても見つけることができません。

そのため、診断でいちばん大事なのは「卵黄を食べて、数時間後に吐いた」という経過そのものです。吐いたときは、次のことをメモしておいてください。

  • 何を、どのくらい食べたか
  • 食べた時刻と、吐き始めた時刻
  • 吐いた回数
  • 顔色やぐったり具合、下痢があったか
  • いつごろ元気に戻ったか

吐いているときの様子を、スマホで写真や動画に残しておくのもおすすめです。受診のときにとても役立ちます。

こんなときは、すぐ受診してください

何度も吐くと、体の水分が足りなくなったり、ぐったりして危ない状態になったりすることがあります。次の目安で判断してください。

【すぐに救急車(119番)】
・目が合わない
・泣き声が弱い
・手足が冷たい、手足の色が悪い
・手足がだらんとしている

【急いで病院を受診】
・何度も吐いて、顔色が真っ青・ぐったりしている
・吐き気がおさまっても、水分がとれない

【おうちで様子を見てよい目安】
・吐き気がおさまって、水分がとれる(スプーン1杯ずつから少しずつ)
・顔色が戻って、いつもどおり元気

症状が進むこともあるので、吐き始めてから4〜6時間は、お子さんを1人にせず見守ってください。

また、FPIESには、アレルギーのときに使う注射(エピペン)や点鼻薬(ネフィー)は効きません。ぐったりしているときは、病院で点滴などの治療が必要です。

どうやって診断するの?

FPIESの診断は、血液検査ではなく、症状の経過で考えます。

同じ食べ物で2回以上、同じように吐いたときや、病院で食べてみる検査で症状が出たときに、FPIESと診断します。

1回吐いただけでは、胃腸炎など別の原因のこともあります。だからこそ、先ほどの「メモ」が大切になります。

治るの?また卵黄を食べられる?

FPIESの多くは、成長とともに治っていきます。

日本の報告では、発症から1年後に約4割、2年後には約8割の子が、食べられるようになっていました(完治していました)。

ただし、「もう大丈夫かな」と自己判断で食べさせるのは危険です。また食べ始めるときは、病院で食べてみる食物負荷試験が安全です。医師と相談して進めていきましょう。

よくある質問

Q. 卵黄を食べて吐いたのは1回だけです。FPIESでしょうか?
A. 1回だけでは、胃腸炎など別の原因のこともあります。「何時に何を食べて、何時に吐いたか」をメモして、かかりつけの小児科に相談してください。次に卵黄をどうするかも、医師と相談して決めましょう。

Q. じんましんが出ていないので、アレルギーではないと思っていました。
A. FPIESは、じんましんや咳が出ないのが特徴です。肌に何も出ていなくても、食べて数時間後にくり返し吐くときは、FPIESの可能性があります。

Q. 治ったかどうかは、血液検査で分かりますか?
A. 分かりません。治ったかどうかは、病院で食べてみて確認します。

まとめ

FPIES(エフパイス)は、腸で起こる特殊なアレルギー

卵黄を食べて2〜4時間後に何度か吐き、数時間後にはケロッと元気になるのが典型

原因はほとんど卵黄。大豆・小麦・牛乳・魚なども原因になる

じんましんや咳は出ない。普通の食物アレルギーとは、まったく違う病気

血液検査ではわからない。「何を食べて、何時間後に吐いたか」のメモが診断の決め手

ぐったり・顔色が真っ青ならすぐ受診。目が合わない・手足が冷たいときは救急車

多くは成長とともに治る。また食べ始めるときは、自己判断せず医師と相談

卵黄で吐いたとき、「卵デビューが早すぎたのかな」と自分を責めてしまう方もいますが、そんなことはありません。
誰のせいでもありません。正しく知って、落ち着いて対応していきましょう。

「うちの子の場合はどうなの?」と思ったら

ここまで、FPIES(食物蛋白誘発胃腸炎)について解説してきました。ただ、実際の対応や離乳食の進め方は、症状の出方やこれまでの経過、ほかの食べ物の進み具合によって一人ひとり違います。「記事の内容は分かったけれど、うちの子の場合はどうなんだろう」と感じた方も多いのではないでしょうか。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。お子さんの症状や体質、これまでの経過によって適切な対応は異なります。卵黄などを食べたあとに吐いたときや、対応に迷うときは、自己判断で食べさせたりやめたりせず、必ずかかりつけの医師・医療機関にご相談ください。ぐったりしている、顔色が悪いなど症状が強いときは、すぐに医療機関を受診してください。

参考文献

・国立成育医療研究センター プレスリリース「日本の小児における食物タンパク誘発胃腸炎の実態が明らかに」(2024年4月23日)/J Allergy Clin Immunol Pract. 2024

・Nowak-Wegrzyn A, et al. International consensus guidelines for the diagnosis and management of food protein-induced enterocolitis syndrome. J Allergy Clin Immunol. 2017;139:1111-26.

・国立成育医療研究センター アレルギーセンター/厚生労働省 好酸球性消化管疾患研究班「食物蛋白誘発胃腸炎(消化管アレルギー嘔吐タイプ)嘔吐発作時のアクションプラン」(2021年12月)

・早野聡ほか「食物蛋白誘発胃腸炎(FPIES)の診断と予後」浜松医科大学小児科学雑誌 2025;5(1):12-17.

・日本小児アレルギー学会「食物アレルギー診療ガイドライン2021」