オボムコイドってなに?卵アレルギーの血液検査の見方を小児科専門医が解説

オボムコイドってなに?卵アレルギーの血液検査の見方を小児科専門医が解説

「血液検査の結果に“オボムコイド”って書いてあるんですけど、これって何ですか?」

卵アレルギーの血液検査の結果を見て、外来でとてもよく聞かれる質問です。「卵白」や「卵黄」はわかるけれど、「オボムコイド」は聞き慣れない言葉ですよね。

結論から言うと、オボムコイドは卵白に含まれるタンパク質のひとつで、熱に強いのが特徴です。卵白とオボムコイドの数値を組み合わせて見ると、「加熱した卵なら食べられそうか」を考えるヒントになります。

この記事では、オボムコイドとは何か、検査結果の数値をどう見ればいいのかを、小児科専門医が解説します。

「オボムコイド」は卵白に含まれるタンパク質のひとつ

卵アレルギーが心配なときは、血液検査で「特異的IgE抗体」を調べます。これは、その食べものに対して体がどのくらい反応する準備をしているかを示す数値です。

卵の検査では、「卵白」「卵黄」に加えて「オボムコイド」という項目を調べることがあります。たとえば、検査結果は次のように書かれています。

卵アレルギーの血液検査結果の例|卵白・卵黄・オボムコイドの特異的IgE値(UA/mL)とクラス
卵アレルギーの血液検査結果の例(数値は説明用の例です)

数値はクラス0〜6の7段階に分けられ、数値が高いほどクラスも高くなります。

この「オボムコイド」とは、実は卵白の中に含まれるタンパク質のことなんです。

卵アレルギーのほとんどは「卵白アレルギー」

卵アレルギーの原因になるタンパク質は、そのほとんどが卵白に含まれています。卵黄にもアレルギーの原因になる成分はありますが、卵白に比べるとずっと少なく、アレルギーの起こしやすさは「卵黄<<<卵白」です。

卵黄と卵白のアレルギーの起こしやすさの比較|卵アレルギーの原因はほとんどが卵白
アレルギーの起こしやすさは「卵黄<<<卵白」

だから、離乳食の卵デビューは固ゆでした卵黄から始めるのがおすすめです。卵黄から始める理由や具体的な進め方は、こちらの記事で詳しく解説しています(👉離乳食の卵デビュー、注意点は4つ)。

卵白の主なタンパク質はオボアルブミンとオボムコイド

卵白には何種類ものタンパク質が含まれています。割合の目安は次のとおりです。

卵白に含まれるタンパク質の割合のグラフ|オボアルブミン約54%・オボムコイド約11%・その他(オボトランスフェリン、リゾチームなど)約35%
卵白のタンパク質の割合(目安)

卵アレルギーの主な原因になるのが「オボアルブミン」と「オボムコイド」の2つです。オボアルブミンは卵白のタンパク質の約半分、オボムコイドは約1割を占めています。

そしてこの2つは、熱に対する強さがまったく違います。

オボアルブミンは熱に弱く、オボムコイドは熱に強い

オボアルブミンは熱に弱いタンパク質です。加熱すると形がくずれて、アレルギーを起こしにくくなります。

一方、オボムコイドは熱に強いタンパク質です。しっかり加熱しても形がくずれにくく、アレルギーを起こしやすいまま残ります。

加熱によるオボアルブミンとオボムコイドの変化のイラスト|オボアルブミンは熱に弱く形がほどける、オボムコイドは熱に強く形がそのまま残る
オボアルブミンは熱に弱く、オボムコイドは熱に強い

実際に、卵を20分ゆでた固ゆで卵では、オボアルブミンは生卵の0.005%まで減っていたのに対し、オボムコイドは約6%が残っていたというデータがあります。

つまり、加熱した卵で症状が出るかどうかには、熱に強いオボムコイドが大きく関わっています。だからこそ、血液検査でオボムコイドの数値を確認することが大事なのです。

検査結果の見方:卵白とオボムコイドの組み合わせ

卵白とオボムコイドの数値は、2つを組み合わせて見るのがポイントです。

卵白とオボムコイドの特異的IgE値の組み合わせによる検査結果の見方|卵白が高くオボムコイドが低いと加熱した卵は食べられる可能性大、両方高いと加熱した卵でも症状が出る可能性あり
卵白とオボムコイドの数値の組み合わせで見る、検査結果の見方

パターンA:卵白は高い、オボムコイドは低い
卵白への反応の多くは、熱に弱いオボアルブミンによるものだと考えられます。オボアルブミンは加熱で壊れるので、しっかり加熱した卵なら食べられる可能性が高いパターンです。
ただし、加熱が足りない卵ではオボアルブミンが残ります。生卵や半熟卵、温泉卵などでは症状が出ることがあるので注意が必要です。

パターンB:卵白もオボムコイドも高い
熱に強いオボムコイドにも反応しているので、しっかり加熱した卵でも症状が出る可能性があるパターンです。自己判断で卵を食べさせず、主治医と相談しながら進めてください。

数値を見るときに知っておきたい3つのこと

① 数値は「症状が出る可能性」の目安
特異的IgE抗体の数値は、「その食べものを食べたときに症状が出る可能性がどのくらいあるか」の目安です。数値が高いほど症状が出る可能性は高くなりますが、症状の重さを表しているわけではありません。

② 数値が高くても食べられる子はいる
血液検査で数値が高くても、実際には問題なく食べられる子もいます。逆に、数値が低くても症状が出ることがあります。数値だけで「食べられる・食べられない」は決まりません。

血液検査の数値と、実際に食べられるかどうかの関係は、こちらの記事でも詳しく解説しています(👉血液検査で陽性=食物アレルギーではありません!)。

③ 最終的には負荷試験などで確かめる
実際に食べられるかどうかは、病院で少量ずつ食べて確かめる「食物経口負荷試験」などで確認するのが基本です。検査結果は、どの卵料理から、どのくらいの量で試すかを考えるための材料になります。

よくある質問

Q. オボムコイドの数値が低ければ、卵を食べさせても大丈夫ですか?
A. しっかり加熱した卵なら食べられる可能性は高いですが、生卵や半熟卵では症状が出ることがあります。また、数値だけで判断はできないので、どの卵料理をどのくらいの量から始めるかは、主治医と相談して決めてください。

Q. 卵白もオボムコイドも高いです。卵はずっと食べられませんか?
A. そんなことありません。卵アレルギーは成長とともに食べられるようになる子が多いアレルギーです。数値の変化を見ながら、負荷試験などで少しずつ食べられる量を確かめていきます。

Q. 検査で「卵黄」の数値も出ています。卵黄なら食べられますか?
A. 卵黄は卵白に比べてアレルギーを起こしにくいです。数値が高くても、基本的に、ほとんどの人が卵黄は症状なく食べることができます。ただ、卵白成分が染み込んでしまうとアレルギー症状の原因になるので、卵黄から始める場合も、固ゆでにして早めに卵白から分けることが大切です。

まとめ

  • オボムコイドは、卵白に含まれるタンパク質のひとつ
  • アレルギーの起こしやすさは「卵黄<<<卵白」。卵デビューは固ゆで卵黄から
  • 卵白の主な原因タンパク質は、オボアルブミンとオボムコイドの2つ
  • オボアルブミンは熱に弱く、オボムコイドは熱に強い
  • 卵白が高くオボムコイドが低い→加熱した卵なら食べられる可能性が高い
  • 卵白もオボムコイドも高い→加熱した卵でも症状が出る可能性がある
  • 数値は目安。最終的には負荷試験などで確かめる

検査結果の数字だけを見て、不安になったり、自己判断で卵をやめたり始めたりする必要はありません。数値の意味を知って、主治医と相談しながら焦らず少しずつ進めていきましょう。

「うちの子の場合はどうなの?」と思ったら

ここまで、卵アレルギーの血液検査に出てくるオボムコイドについて解説してきました。ただ、実際の進め方は、検査の数値だけでなく、これまでに卵を食べたときの様子や年齢、ほかのアレルギーの有無によって一人ひとり違います。「記事の内容は分かったけれど、うちの子の場合はどうなんだろう」と感じた方も多いのではないでしょうか。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。お子さんのアレルギーの症状や体質、これまでの経過によって適切な対応は異なります。検査結果をもとに卵を食べさせるかどうか迷うときは、自己判断せず、必ずかかりつけの医師・医療機関にご相談ください。

参考文献

・日本小児アレルギー学会 食物アレルギー委員会. 食物アレルギー診療ガイドライン2021. 協和企画, 2021.

・海老澤元宏 ほか. 食物アレルギーの診療の手引き2023. 厚生労働科学研究班, 2023.

・伊藤節子. 食物アレルギー患者指導の実際. アレルギー. 2009;58(11):1490-1496.