吸入ステロイドの副作用は?「身長」と「鵞口瘡(がこうそう)」を小児科専門医が解説

「ステロイドって、大丈夫なんですか?」

喘息のお子さんに吸入薬を処方したとき、いちばん多く聞かれる質問です。

気持ちはよく分かります。「ステロイド」という言葉には、太る、免疫が下がる、骨がもろくなる……そんなイメージがついてまわります。実際、そう心配して吸入をやめてしまう方もいます。

ですが、吸入ステロイドは、みなさんが想像している飲み薬のステロイドとは、届く場所も量もまったく違う薬です。

この記事では、吸入ステロイドで実際に起こりうる副作用を正直にお伝えします。そのうえで、それでも毎日使う理由をお話しします。

読み終わるころには、吸入器を持つ手が少し軽くなるはずです。

結論:想像しているような副作用は、通常は起きません

先に結論を書きます。

吸入ステロイドで、ムーンフェイス(顔が丸くなる)、体重が増える、免疫が下がる、骨がもろくなる——こうした全身の副作用は、通常の使い方では起こりません。

これらは、飲み薬や点滴のステロイドを長く使ったときに知られている副作用です。同じ「ステロイド」でも、吸入薬はまったく別の使われ方をします。

なぜ、全身への影響が少ないのか

理由は3つあります。

1つ目は、届け先が違うことです。飲み薬や点滴は、血液にのって体じゅうを回ります。一方、吸入ステロイドは口から吸い込んで、炎症が起きている気管支に直接届けます。狙ったところにピンポイントで置いてくるイメージです。

2つ目は、量が桁違いに少ないことです。気管支に直接届くため(局所投与)、内服の100分の1程度のわずかな量でも充分に効果を発揮します。

3つ目は、体に入った分がすぐ分解されることです。飲み込んでしまった分や、血液に入った分は、肝臓で速やかに分解されます。なので、内服薬のような副作用は起こりません。

だからこそ、吸入ステロイドは小児喘息の長期管理の中心の薬として、世界中で長年使われています。

副作用① がこうそう(口の中のカビ)

ここからは、実際に起こりうる副作用です。1つ目は「がこうそう」、口腔カンジダ症とも呼ばれます。

▲ がこうそう。舌や頬の内側に、白いミルクかすのような斑点がつく

吸った薬の一部は、肺に届く前に口の中やのどに残ります。ステロイドがそこに残ったままだと、口の中の粘膜の力が一時的に落ちて、もともと口にいるカンジダというカビが増えることがあります。

見た目は、舌や頬の内側につく白いミルクかすのようなブツブツです。ミルクの飲み残しと違って、こすってもきれいに取れません。痛みが出ることもあります。

たっち先生
たっち先生

見つかっても、心配しすぎなくて大丈夫です。お薬を使えば治ります。
気づいたらかかりつけの先生に見せてください。

がこうそうは、うがいでほぼ防げます

大事なのは、起きてから治すことよりも、起こさないことです。

▲ 吸入のあとは毎回うがい。口の中に残った薬を洗い流すのがいちばんの予防法

吸入の後に毎回うがいをすることで防げます。

うがいは、口をゆすぐ「ブクブクうがい」と、のどの奥まで届く「ガラガラうがい」の両方ができると理想的です。薬はのどの奥にも残るからです。

うがいがまだできない月齢の子は、どうすればいい?

ここがいちばんよく聞かれるところです。1〜2歳では、まだうまくうがいができません。

そのときは、次の方法で代用できます。

  • 吸入のあとに、水やお茶を飲ませるだけでOK。口に残った薬を胃に流してしまえば、肝臓で分解されるので問題になりません。
  • 授乳中のお子さんなら、吸入のあとに授乳するのでも構いません。

「うがいができないから吸入をやめる」は、いちばんもったいない選択です。代わりの方法があるので、かかりつけの先生に使い方を確認してみてください。

副作用② 身長への影響

2つ目は身長です。ここは正直にお伝えします。

吸入といっても、肺に入った薬のうち、ごく微量は血液にのって全身に回ります。その影響で、成長が少しゆっくりになることが知られています。

▲ 肺に届いた薬のうち、ごく微量は全身に回る。この量が身長にわずかに影響する

吸入ステロイドを4〜6年使用した人たちが成人したときの身長は、吸入ステロイドを使わなかった人たちより平均で1.2cm低くなると言われています。

▲ 差は平均1.2cm。並んで立っても、ほとんど見分けがつかない程度の差

たっち先生
たっち先生

CAMP研究という大規模で信頼度の高い研究の結果です。5〜13歳の喘息の子ども1,041人に、吸入ステロイドを1日400μg、4〜6年間使い、大人になるまで追跡しました(N Engl J Med. 2012)。

それでも毎日使うのは、なぜ?

ここまで読んで、「それでもやっぱり気になる」と思う方もいると思います。そこで、使わなかった場合に何が起きるかをお話しします。

喘息は、発作のときだけ悪くなる病気ではありません。症状がないときも、気管支の中では炎症が続いています(詳しくは👉気管支喘息ってどんな病気?)

この炎症を放っておいて発作をくり返すと、気管支の壁が少しずつ厚く、硬く変化していきます。これをリモデリングといいます。

▲ 発作をくり返すと、気管支の壁が厚く硬くなって、通り道が細いまま元に戻らなくなる

こうなると、薬を使っても元どおりには戻りません。空気の通り道が狭いままになり、走ると苦しい、常にゼーゼーしているという状態が、大人になっても続くことがあります。

整理すると、こういうことです。

  • 使う場合:大人になったときの身長が平均1.2cm低いかもしれない。がこうそうはうがいで防げる。
  • 使わない場合:発作をくり返し、気管支が硬くなって呼吸機能が落ちたまま戻らないかもしれない。

だから、世界中のガイドラインが吸入ステロイドを長期管理の中心に置いています。デメリットよりメリットが圧倒的に大きい、という判断です。

ほかに気をつけることは?

とても多い用量を長く続ける場合には、副腎の働きが抑えられるといった全身性の副作用の報告もあります。ふつうに使う量では問題になりませんが、これも「定期的に受診して、必要最小限の量に調整する」ことでほぼ避けられます。自己判断で量を増やさないでください。

よくある質問

Q. 症状がないのに、いつまで続けるんですか?
A. 症状がないのは、薬で炎症が抑えられているからです。喘息は症状が自然に消えたり薬で消えたりする病気で、症状がないこと=治ったこと、ではありません。ただし一生続けるわけでもありません。症状が安定している期間が続けば、量を減らしたり、やめたりしていきます。判断はかかりつけの先生と一緒に行ってください。

Q. うがいを1回忘れてしまいました。大丈夫ですか?
A. 1回忘れただけで、すぐがこうそうになるわけではありません。気づいたときに水やお茶を飲めば十分です。大事なのは習慣にすることです。

Q. 吸入は食前と食後、どちらがいいですか?
A. どちらでも構いません。歯みがきや食事とセットにすると、うがいまで一連の流れになって忘れにくくなります。

Q. 吸入をやめたら、身長は伸びますか?
A. 「やめれば取り戻せる」という単純な話ではありません。差がつくのは主に使い始めの時期で、その後は差が広がらないことが分かっています。やめることで得られるものは大きくない一方、発作のリスクは上がります。自己判断で中止しないでください。

まとめ

  • 吸入ステロイドは、飲み薬のステロイドとは届く場所も量も違います。気管支に直接届き、内服の100分の1程度の量で効きます
  • ムーンフェイスや免疫低下といった、想像されるような全身の副作用は通常起きません
  • 主な副作用は2つ。①がこうそう(口の中のカビ)②身長へのわずかな影響
  • がこうそうは、吸入後のうがいでほぼ防げます。うがいができない子は、水やお茶を飲ませる・スペーサーを使うで代用できます
  • 身長は、大人になったときで平均1.2cm低いという報告があります。ただし差がつくのは主に使い始めの1〜2年で、その後は差が広がりません
  • 使わずに発作をくり返すと、気管支が硬くなって元に戻らなくなることがあります(リモデリング)
  • わずかな身長差と、一生ものの呼吸機能。天秤にかけたとき、メリットのほうが大きいと考えられています

「ステロイド」という名前だけで判断せず、何が起きて、何が起きないのかを知ったうえで使ってもらえたらと思います。

「うちの子も、ずっと吸入を続けて大丈夫?」と思ったら

ここまで、吸入ステロイドで心配されるような全身の副作用は通常起きないこと、がこうそうと身長への影響について解説してきました。ただ、実際にいつまで続けるのか、量を減らせるのかは、お子さんの発作の頻度やこれまでの経過によって一人ひとり違います。

そんなときは、たっち先生のオンライン健康相談をご利用ください。小児科専門医が、ビデオ通話で時間をとってお話をうかがいます。

  • 毎日の吸入をいつまで続けるのか、やめどきの考え方を知りたい
  • 副作用が心配で、自己判断で減らしたり止めたりしてしまっている
  • 身長の伸びが気になっていて、このまま続けていいか迷っている
  • 忙しい外来では聞ききれなかったことを、じっくり相談したい

短い診察時間では整理しきれなかった不安も、しっかりと時間をとって一緒に言葉にしていけます。

※本サービスは医療機関における「診療」ではなく、健康に関する情報提供・相談です。診断・薬の処方・治療方針の決定は行いません。お薬の量を変える・やめるといった判断は、必ずかかりつけの医療機関で行ってください。

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参考文献

・独立行政法人環境再生保全機構(ERCA)「ぜん息の薬」小児ぜん息基礎知識

・Kelly HW, Sternberg AL, Lescher R, et al. Effect of inhaled glucocorticoids in childhood on adult height. N Engl J Med. 2012;367(10):904-912.(CAMP研究)

・Zhang L, Prietsch SO, Ducharme FM. Inhaled corticosteroids in children with persistent asthma: effects on growth. Cochrane Database Syst Rev. 2014;(7):CD009471.

・一般社団法人日本小児アレルギー学会『小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2023』(JPGL2023)

・小児慢性特定疾病情報センター「気管支喘息 概要」

・Global Initiative for Asthma (GINA). Global Strategy for Asthma Management and Prevention, 2025 update.

※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。お子さんの症状や体質、持病によって適切な対応は異なります。薬の開始・変更・中止を自己判断で行わず、気になる症状があるときや対応に迷うときは、必ずかかりつけの医師にご相談ください。呼吸が苦しそうなとき、唇の色が悪いとき、ぐったりしているときは、急いで受診してください。