テーブルの上のお味噌汁に手を伸ばして、子どもが大泣き。腕が赤くなっている――。
そんなとき、とっさに冷凍庫の氷や保冷剤を取りに行ったり、濡れた服をあわてて脱がせたりしていませんか? 実はどちらも、やけどをかえって悪くしてしまうことがあります。
この記事では、子どものやけどの応急処置で大事な「注意点3つ」と、氷じゃダメな理由、病院に行く目安・すぐに救急受診する目安を、小児科専門医が解説します。
やけどの応急処置、注意点は3つ
① すぐに流水で冷やす(目安は10〜20分)
② 氷や保冷剤を直接当てない
③ 服は脱がさず、服の上から冷やす
ひとつずつ見ていきましょう。
注意点① すぐに流水で冷やす(目安は10〜20分)
やけどをしたら、何よりも先に冷やします。いちばんいいのは、水道の水を流しながら冷やす方法です。
冷やすことで、皮膚の中にこもった熱が逃げて、やけどが深くなるのを防げます。痛みもやわらぎます。
冷やす時間の目安は10〜20分です。
「やけどはすぐに、できればきれいな流水で冷やす」が大原則です
冷やし方のコツは次の3つです。
・水は勢いよく当てず、やけどの少し上から、やさしく流す
・顔や体など水を流しにくい場所は、洗面器やバケツにためた水で冷やす
・「少し時間がたってしまった」というときも、気づいた時点で冷やす
やけどをしてから時間がたっていても、3時間くらいまでは冷やす意味があるとされています。「もう遅いかも」とあきらめずに、まず冷やしてください。
注意点② 氷や保冷剤を直接当てない
早く冷やしたくて、氷や保冷剤を当てたくなりますよね。でも、氷や保冷剤を直接やけどに当てるのはNGです。
また、おでこに貼るタイプの冷却シートも、やけどの手当てには使えません。冷やすのは、あくまで「水」です。
氷じゃダメな理由
氷がダメな理由は、大きく3つあります。
1つ目は、冷えすぎて皮膚をさらに傷めてしまうからです。やけどで弱っている皮膚に、0℃の氷を直接当てると、冷たさで皮膚が傷つく「凍傷」を重ねてしまうことがあります。ギュッと押し当てると、さらに傷めやすくなります。
2つ目は、氷で冷やしても、早く治るわけではないからです。動物の実験では、氷で皮膚の温度は下がっても、傷が早く治ったり、跡が残りにくくなったりはしませんでした。
3つ目は、子どもは体が冷えやすいからです。子どもは大人より体が小さく、体の熱が逃げやすいつくりになっています。広い範囲を氷で強く冷やすと、体全体が冷えすぎてしまうことがあります。
どうしても流水が使えないとき(外出先など)は、氷や保冷剤をタオルや布で包んで、当てるのは10分までにしましょう。アメリカのガイドラインでも、流水がないときに限って、このやり方なら使ってよいとされています。
注意点③ 服は脱がさず、服の上から冷やす
熱いお茶や味噌汁が服の上からかかったとき、つい服を脱がせたくなります。でも、服は無理に脱がさず、服の上からそのまま冷やしましょう。
やけどをした皮膚は、服にくっついていることがあります。無理に脱がすと、皮膚がいっしょにはがれてしまうおそれがあるからです。
一方で、指輪・腕時計・ブレスレット・ヘアゴムなど、締めつけるものは早めに外してください。やけどをした場所はあとから腫れてくるので、腫れてからだと外れなくなり、血の流れが悪くなることがあります。
冷やしすぎにも注意(子どもは体が冷えやすい)
流水で冷やしているときも、子どもは体が冷えすぎることがあります。シャワーで全身を冷やした子どものうち、4%くらいの子が体が冷えすぎたり、ガタガタ震えたりしたという報告もあります。
冷やすのは、やけどをした場所だけにする
ほかの部分はタオルなどで包んで温かくしておく
震えている・唇の色が悪いときは、いったん冷やすのをやめて体を温める
特に、やけどの範囲が広いときや、赤ちゃん・小さな子どもは注意してください。
冷やしたあとにやること
- 水ぶくれはつぶさない(つぶすとばい菌が入りやすくなります)
- 清潔なガーゼやタオルで、やけどの場所をふんわり覆う
- 病院に行くときは、薬や軟膏は塗らずに、そのまま見せる
何も塗らずに受診すると、医師がやけどの深さや広さを正しく確認しやすくなります。
病院を受診する目安
次のようなときは、病院を受診しましょう。
- 水ぶくれができた
- やけどの範囲が、子どもの手のひらより広い
- 顔・手・足・おまた(陰部)のやけど
子どもの手のひらの広さは、体の表面のおよそ1%です。手のひらより広いやけどは、家だけで様子を見ないで受診してください。
顔・手・足・陰部のやけどは、小さくても受診をおすすめします。動かす場所や目立つ場所なので、治り方によっては、あとに影響が残ることがあるからです。
すぐに救急受診する目安
次のようなときは、夜間や休日でも、すぐに救急受診しましょう。
- 体の広い範囲のやけど(片腕・片足以上の広さ)
- 顔のやけど
- やけどの場所が白っぽい・黒っぽい、触っても痛がらない(深いやけどの可能性)
全身の広い範囲のやけどや、顔のやけどのときは、ためらわずに救急車を呼んでください。
よくある質問
Q. 赤くなっただけで、水ぶくれもありません。病院に行かなくていいですか?
A. 赤くなっただけで、範囲が手のひらより小さく、顔・手・足・陰部でなければ、しっかり冷やして家で様子を見てもよいことが多いです。ただし、あとから水ぶくれが出てくることもあります。水ぶくれが出てきたときや、痛がる様子が続くときは受診してください。
Q. 湯たんぽやホットカーペットで、赤くなっていました。
A. 低い温度のものに長く触れていてできる「低温やけど」は、見た目より深いことがあります。痛がる様子が続くときや、だんだん悪くなるときは受診しましょう。
Q. 冷やしている間、子どもが嫌がって泣きます。
A. 冷たい水を嫌がるのは自然なことです。抱っこしながら冷やしたり、洗面器にためた水に手をつけたりと、やりやすい方法で大丈夫です。少しでも長く冷やすことを優先してください。
まとめ
- やけどをしたら、すぐに流水で10〜20分冷やす
- 氷や保冷剤を直接当てない(冷えすぎて皮膚を傷める・早く治るわけではない・子どもは体が冷えやすい)
- 服は脱がさず、服の上から冷やす。指輪や腕時計など締めつけるものは早めに外す
- 冷やしすぎに注意。冷やすのはやけどの場所だけにする
- 水ぶくれはつぶさず、何も塗らずに受診する
- 水ぶくれ・手のひらより広い・顔や手のやけどは病院へ
- 体の広い範囲や顔のやけどは、夜でもすぐに救急受診
子どものやけどは、キッチンでもお風呂でも、一瞬で起きてしまいます。いざというときに迷わないように、ぜひ保存しておいてくださいね。
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※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。やけどの深さや広さ、場所、お子さんの年齢によって適切な対応は異なります。やけどの状態が心配なときや対応に迷うときは、自己判断せず、必ず医療機関にご相談ください。
参考文献
・American Heart Association, American Red Cross. 2024 American Heart Association and American Red Cross Guidelines for First Aid. Circulation. 2024;150:e519–e579. doi:10.1161/CIR.0000000000001281
・American Red Cross Scientific Advisory Council. Burn Cooling — Scientific Advisory(2019年6月承認)
・消費者庁「子どもを事故から守る!事故防止ポータル」メール配信サービス Vol.610「暖房器具などによるやけどに注意!」(2022年11月)