フルミストと注射、どっちを選ぶ?効果の差と注意点を小児科専門医が解説

鼻にシュッとするだけのフルミストが日本でも使えるようになって、選択肢が増えたぶん、迷う方も増えました。

結論から言います。効果に差はありません。

この記事では、世界中の研究データと日本小児科学会の見解をもとに、注射とフルミストに違いや注意点をわかりやすく説明していきます。

結論:効果に差はありません

まず、いちばん知りたいところをはっきりさせておきます。

鼻にスプレーする経鼻ワクチン(商品名フルミスト)と、腕に打つ注射のワクチン。このふたつは、インフルエンザにかかりにくくする力も、かかったときに重症化しにくくする力も、同等です。

世界中の研究109本を集めても、差はなかった

では、その根拠はどこにあるのか。

2025年に発表された解析が、いちばん規模の大きいものです。2003年から2023年までの20年間、北半球で行われた研究109個を集めて、経鼻ワクチンと注射のどちらがよく効くのかを比べました。

結果は、「全インフルエンザに対する有効率は、両者とも同じくらい」というものでした。

実は、年によって勝ち負けが入れ替わっています

「ずっと互角」だったわけではありません。ウイルスの型と年によって、勝ったり負けたりしています。

この勝ったり負けたりの回数がほぼ同じなので、「どちらかが一貫して優れている」とは言えない状況なのです。

ときどき「去年は鼻のほうが効いたらしい」という話を聞くことがありますが、1シーズンだけを切り取るとそう見える年は確かにあります。ただ、翌年には逆になることもあるので、選ぶ基準にはしないほうがいいと思います。

入院や重症化を防ぐ力は?

かかりにくさだけでなく、重症化予防の効果も気になるところだと思います。

こちらも、アメリカの予防接種諮問委員会(ACIP)が両者を比較した評価で、インフルエンザによる入院に有意な差はないと結論づけています。

なお、亡くなるリスクについては、ワクチンの種類別に比べたデータがそもそも存在しません。インフルエンザで子どもが亡くなること自体がものすごくまれなので、比べられるだけの数が集まらないのです。「差がない」のではなく「比べたデータがない」ということになります。

なお、予防接種(フルミスト・注射ワクチンを合わせて)としての効果は、別の記事で詳しく解説しています(👉インフルエンザの予防接種って意味あるの?)。

では、何で選べばいいのか

実際の違いは、次の3つです。

たっち先生
たっち先生

注射は1回目で痛い思いをしていると、2回目病院に連れて行くのが大変になることもよくあります。
回数の違いは、大きく効いてきます。

フルミストを選ぶ前に知っておきたいこと

痛くないという点だけを見て決めてしまう前に、知っておいていただきたい注意点があります。フルミストは注射のワクチンとは、そもそもの仕組みが違うからです。

生ワクチンである

インフルエンザのワクチンには、大きく2つのタイプがあります。

注射は「不活化ワクチン」といって、中身はウイルスではなくウイルスの部品です。「ウイルスの部品」だけを免疫に見せて、次に本物が入ってきたときのために練習させておくタイプです。
ウイルスそのものではなく、ウイルスみたいなものを注入するワクチンなので、ワクチンのせいでインフルエンザを発症することはありません。

一方、フルミストは「生ワクチン」です。こちらは、本物のウイルスを弱めて使います(弱毒化ウイルス)。
この弱毒化ウイルスを鼻に注入し、自然にかかったときに近い形で免疫をつけます。

この「弱めてあるとはいえ、生きたウイルスが実際に鼻の中に入る」という性質が、次の注意点すべての理由になっています。

フルミストの注意点

上の仕組みがあるため、フルミストには注射にはない注意点があります。

①2歳未満はできない

フルミストは2歳未満は打てません。
2歳未満に接種すると、入院や喘鳴といった重たい副作用のリスクが増えたという報告があるためです。
小さい子供にとっては弱毒化したウイルスでも、しんどくなることがあるのです。

②喘息のある子は注意

日本小児科学会は、喘息のあるお子さんには注射をすすめています。
弱毒化していても、本物のウイルスが体内に入るので、これがきっかけで喘息発作を起こすことがあるからです。

・ご家族に重い免疫不全の方(抗がん剤治療中、臓器移植後など)がいる場合は注射を選んでください。接種後しばらくはくしゃみや唾から、ワクチンのウイルスが飛び散るからです。

③インフルの検査が陽性になってしまう

弱毒化しているとはいえ、鼻の中に本物のウイルスを注入するので、フルミストをうってから7〜10日くらいは鼻の中でフルミストウイルスが活動しています。
この時期に鼻に綿棒を入れるインフルの検査をすると、フルミストによるウイルスのせいで、インフルにかかっていなくても、検査が陽性になることがあります。

困るのは、この時期に熱が出たときです。検査が陽性でも、それが本物のインフルエンザなのか、ワクチンのウイルスを拾っただけなのか、見分けがつきません。

さらにややこしいのが、フルミストを接種して2週間はタミフル等の抗インフルエンザ薬を使うと、フルミスト中の弱毒化インフルエンザウイルスに対しても効いてしまうので、予防接種の効果が減弱してしまいます。この点から、むやみに抗インフルエンザ薬を使うわけにもいきません。接種後10日ほどの時期に高熱が出てしまうと非常にややこしくなります。特に今年(2026年シーズン)は10月時点ですでにインフルエンザが流行しているので、フルミストを打ってから数日で本物のインフルエンザに感染する可能性も十分にあります。

たっち先生
たっち先生

紛らわしいのは、打ってから10日くらいまでです。実際に検査で拾われやすいのは最初の数日で、1週間を過ぎるとほとんど出なくなります。

④周りにフルミストのウイルスをばら撒いてしまう

鼻に注入した弱毒化ウイルス(フルミスト中のウイルス)は、くしゃみをすると周りの人に飛び散ります。

普通の人であれば飛び散っても弱毒化してるので問題ありませんが、新生児や免疫不全の人には要注意です。

たっち先生
たっち先生

こういった理由で、授乳中のお母さんは注射がすすめられています(赤ちゃんにウイルスがうつるから)
ご家族に免疫不全の方がいたり、抗がん剤治療中の方がいる場合もフルミストは避けた方が無難だと思います。

⑤6割くらいのお子さんに鼻水や鼻づまりなどの副作用が出ます

国内の試験では、鼻づまりや鼻水が59.2%、咳が27.8%、のどの痛みが17.9%、頭痛が11.2%に見られました。およそ6割ですから、めずらしいことではありません。意外と副作用が多いんです。

これも、鼻の中でワクチンのウイルスが増えているためです。痛みがない代わりに、数日は鼻かぜのような状態になると思っておいてください。多くは自然におさまります。

たっち先生
たっち先生

フルミストをやめておいた方がいいというわけでは決してありません。特に「1回で済む」というのは、小さい子どもにとっては非常にいいと思います。ただ、これらを知った上で選んでいただきたいということです。

よくある質問

Q. フルミストのほうが効果が長持ちすると聞きました。本当ですか?
A. 「1年くらい持つ」という説明を見かけることがありますが、それを裏づける確かなデータは見あたりません。インフルエンザワクチンはどちらのタイプも、毎シーズン打ち直す前提で使われています。持続時間もほぼ同じくらいと考えていいと思います。

Q. 鼻から入れるほうが、自然の感染に近くて免疫がしっかりつくのでは?
A. 仕組みとしてはそのとおりで、経鼻ワクチンは鼻やのどの粘膜でも働く免疫を誘導すると考えられています。ただし、それが実際の発症予防の成績につながっているかというと、ここまで見てきたとおり実際の現実では注射との差は出ていません。

Q. 鼻水が出ていても打てますか?
A. 軽い鼻水であれば接種できることがほとんどです。ただし鼻づまりがひどいとうまく届かない可能性があるので、当日の状態を見て接種先で判断してもらってください。

まとめ

・フルミストと注射で、インフルエンザにかかりにくくする効果に差はありません

・年とウイルスの型によって勝ち負けは入れ替わります。1シーズンだけを見て判断しないでください

・入院を防ぐ力にも差は示されていません(ただしデータの確実性は高くありません)

・日本では、2歳〜19歳未満にどちらも同等に推奨しています

・選ぶ基準は「効きめ」ではなく、痛み・回数・年齢・体質です

・ただしフルミストには打てない子がいます。2歳未満、喘息のお子さん、ご家族に重い免疫不全の方がいる場合は注射を選んでください

・フルミストをうつと、しばらくの間インフルエンザの検査が陽性とでてしまいます。

痛い思いをさせずに済むなら、それに越したことはありません。効果が変わらないのであれば、お子さんが受け入れやすいほうを選んであげてください。いちばん大事なのは、どちらを選ぶかより「打つこと」です。

「うちの子はどっちがいいの?」と思ったら

ここまで、フルミストと注射の効果について解説してきました。ただ、実際にどちらを選ぶべきかは、お子さんの年齢や体質、持病、ご家族の状況によって一人ひとり違います。「記事の内容は分かったけれど、うちの子の場合はどうなんだろう」と感じた方も多いのではないでしょうか。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。お子さんの年齢や体質、基礎疾患によって適切な対応は異なります。どちらのワクチンを選ぶか、接種を受けられるかどうかについては、自己判断せず、必ずかかりつけの医師・医療機関にご相談ください。

参考文献

・日本小児科学会「2025/26シーズンのインフルエンザ治療・予防指針」(2025年10月7日)

・日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会「経鼻弱毒生インフルエンザワクチンの使用に関する考え方 ~医療機関の皆様へ~」(2024年9月2日)

・Stuurman AL, Enxing J, Gutiérrez AV, et al. Real-world effectiveness of live attenuated influenza vaccines (LAIV) and inactivated influenza vaccines (IIV) in children from 2003 to 2023: a systematic literature review and network meta-analysis. Expert Rev Vaccines. 2025;24(1):703-725.

・Kitano T, Yoshida S. Effectiveness of live-attenuated and inactivated influenza vaccines against influenza in 2-17-y-old children, United States, 2022-2025. Hum Vaccin Immunother. 2026;22:2618341.

・CDC/ACIP. GRADE for Use of Live Attenuated Influenza Vaccine (LAIV) and Inactivated Influenza Vaccine (IIV) in Children.

・フルミスト®点鼻液 添付文書

・Jackson D, et al. Viral Shedding in Recipients of Live Attenuated Influenza Vaccine in the 2016-2017 and 2017-2018 Influenza Seasons in the United Kingdom. Clin Infect Dis. 2020;70(12):2505-2513.

・Ali T, Scott N, Kallas W, et al. Detection of influenza antigen with rapid antibody-based tests after intranasal influenza vaccination (FluMist). Clin Infect Dis. 2004;38(5):760-762.

・Vesikari T, Karvonen A, Korhonen T, et al. A randomized, double-blind study of the safety, transmissibility and phenotypic and genotypic stability of cold-adapted influenza virus vaccine. Pediatr Infect Dis J. 2006;25(7):590-595.